世界はこんなにも残酷だけれど、 そう思うほどには孤独にさせてくれない。

ワンちゃん視点の、勇者様による魔王討伐の顛末とその後と、一言で言えばそうなってしまうんだけど、そんな単純な物語じゃなくて。
勇者、魔王となれば、ライトノベルのテンプレートであり鉄板である。
その構図を見るだけで、関係はもとより世界に対するイメージまでわいてしまう。

でも重要なのは、そこじゃなくて。
多分なんですが、
世界中の人々が「勇者」と呼ぶけど
このワンコちゃんだけは、
「ご主人様」と呼ぶんですよね。

勇者は、ワンコちゃんを
「相棒」と呼ぶシーンがあって。

それ以外の人との交流はあえて描かれていなくて。
これはもう、勇者のワンコちゃんの「絆」以外のなにものでもない。

世界はこんなにも残酷だけれど、
そう思うほどには、孤独にさせてくれない。

ラストまで読んでもらったら、暖かい感情の何かが染みこんでくるのは不可避だと思います。