筆舌を尽くして語られる圧倒的な世界観に酔いしれる

五月蠅なすという言葉がピタリと当てはまるような、人と異形が犇めく世界はとても魅惑的で、多くの神話の影響を受けているように見受けられます。作者が好きなものをめいっぱい詰め込んだような、そんな豪勢な世界観と設定は知れば知るほどに引き込まれます。
また、そんな世界を語る言葉もそれを彩るに相応しい語句のチョイスと言い回しで、世界観と文章が見事にマッチして素晴らしい相乗効果を生んでいます。平凡な表現になってしまうかもしれませんが、このまま紙の本になっていたとしても遜色がないという感じがしますし、一文一文を余すところなく堪能したくなるような雰囲気の良さが何より魅力的です。

主人公は世間に疎く、それが何も知らない読み手の目や耳となっていること、そして、そのこと自体が彼の謎そのものにも繋がっているのが面白いところです。(おそらくは)忘れられた神の力を行使するくだりから、この世界への関わりが想像されて物語の行く末が気になります。
一癖二癖あるキャラクターたち、遠くで関わる謎の人物たち、それらが今後どのように交わっていくか楽しみですし、どのよう言葉でこの世界での物語が描かれていくのかというメタ的な部分でも注目していきたいと思います。