「光る湖」解説
その後ヴェイセル様は「光る湖」を仮保護区と認定し、護衛にケンタウロスを任命。
付近にある山を根城としていたはぐれワーウルフにも生活を保護する条件で、森にケンタウロス以外の種が近づいたら野盗のふりをして追い払う契約をした。それにより「光る湖」は公に発表されるまでその存在を隠されることになる。
その後の調査により、湖付近に自制する動植物は魔力を多くふくんでいることが判明。他の枯渇した「ルディヴィア様の愛した土地」にも移植され、他の場所も微力ながら活力を取り戻した。その後も貴重な遺産、調査資源として活用され、その後の研究にも多くの成果を残すことになる。
クルト氏はディーレ一行がテリトリーに訪れてから5年後、王国歴254年に保護区管理責任者に任命された。
光る湖が保護区として試験運営を始まるのはそれから30年後。王国歴284年のことになる。
クルト氏は保護区の先駆けとして大いに活躍し、王都にも頻繁に足を運んだことにより「人の国」内で最も知名度の高いケンタウロスとよばれるようになる。その真面目で誠実、爽やかな印象から男女問わず人気であり、ケンタウロス内では族長に次ぐ英雄といった立ち位置を務めあげ続けている。
クルト氏が望んだヴェイセル様との対面も正式な保護区管理責任者任命の際に果たす。その際にディーレ一行とも再会を果たし、仲睦まじい様子を見せたと記録には残っている。
ディーレ・コルセントの死にはショックを受けた様子であったが、今回の「ディーレの手記」出版にあたっては早くから反応を頂いた一人である。取材にも快く応じていただき、当時の様子を大変懐かしそうに語り、手記の内容に目を通すと意外そうな顔をしてから笑っていた。
「ディーレは多くを語る人じゃなかったんですが、文字は雄弁ですね。文字で記すから口に出さなくてもいいと思っていたのかもしれない。ちょっと……いや、かなりズレた人なんですよね。そこが魅力ともいえるんでしょうけど」
そう語るクルト氏は楽し気であり、彼らの交流がせいぜい数週間ほどであったとは思えないほどの信頼関係を垣間見せた。
ディーレ・コルセントという人間をどう思いますか? と筆者が尋ねるとクルト氏は迷わずに答えた。
「尊敬する、初めてできた人間の友人です」
この答えを聞いて筆者は確信したのである。
ディーレ・コルセントは語り手ではなかった。しかし、聞き手であり書き手であり、導き手であったのだと。
王国歴317年発行 「ディーレの手記」光る湖の章 解説より
ディーレの手記 黒月水羽 @kurotuki012
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