少女の気持ちをすぐ近くに感じ取れる、美しい文章

主人公の里穂は、年上の幼馴染の亜利沙に特別な好意を持っている少女です。
噂話なんてすぐに広まる田舎町。
同性の亜利沙への想いを隠しながら里穂は暮らしています。

目下の問題はその秘めた気持ちと、白紙で出した進路調査票。
素直に語られるモノローグは、トレーシングペーパーを使って丁寧に少女の気持ちを写し取ったかのようです。
田舎町を描写する書き出しの表現も、自分をカルガモの子にたとえる比喩なども、大仰ではなく身近に感じます。
そのため読者は深く感情移入して読み進んでいけます。
そして里穂の気持ちや言動が心に響きます。

非常に美しい物語だと感じました。
最後まで読むと、その気持ちは一層強まります。
綺麗で力強い物語です。