虚仮の一念岩をも通す。
もう一度魔法少女に会うために今日も砂場のボスに仁義を通し(アイス一本)、借りきった砂場で奇怪なオブジェづくりに精を出す男子高校生。
自分で文字にすると「なにいってるの? 」となるが、作者が魔法をかけると爽やかなジュヴナイルのような、青春小説のような、すこしふしぎな話になってしまったから驚かされた。
物語の長さも、登場人物を絞り、みなを躍動的に描ききれるちょうどよさに感じた。
そして人間臭いAI。どちらの心の動きも素敵で、こんなシンギュラリティがくるなら期待したい
あとアイスの名前がゆっこペンみたいで好き笑
魔法少女を呼び出すために公園の砂場を買収して砂のオブジェ作りを毎日試みる高校生男子の話。
イタい!
しかし、
誰にも理解されることなく、それでも自分の道を愚直に進む主人公がアツい!
安全安心のハイテク公園とか、オリジナリティあふれまくるフレーバーのアイスとか、絶妙なちょっと未来感の描写も秀逸。
さらに、公園を見守るロボットとか、ガキ大将とか、どこか遠くで主人公と同じく魔法を求めるAIと科学者とか、キャラも楽しい。
なにより、文章がうまくて、読んでるだけでおもしろい。
『曲がった。』とか。
ブランコスカートに対する異なるリアクションと重なるコメントの対比とか。
随所に、この手のはっとする記述がちりばめられていて、すごいって。
短編でさくっと読みやすいのも、ポイント高い。
いやあ、この話、よかったです。
ネタバレにならん程度にコメントするの難しいですね。
そしてどうでもいいですけど、イタのボイスが田村ゆかりで即変換されるのはなんかの魔法ですかこれ。
本作を端的に説明するなら、一人の男子高校生が子供をアイスで買収し公園の砂場を占領して日々奇妙なオブジェを作り続ける物語である。
……これだけだとよくわからないかもしれないが、本作ではそこにシンギュラリティや魔法少女という要素が関わってくる……ますますわからない。
そんな一見シュールに見える物語なのだが、最後まで読み終わると全てが腑に落ちる内容になっているから凄い。
スコップとバケツを持って公園に通い続ける現在、自称・魔法少女と出会った子供時代、とある研究者と妙に人間臭いAIの会話、これらのバラバラの3つのパートが最終的に噛みあうことでそれまで不可解だった物語に一つの答えが導き出される。これこそが科学である。
また犬型のAIが見守る公園の風景、変人扱いされる主人公と周囲の人々の会話、やたら詩的なアイスのフレーバー名、など作品を構成する要素がいずれも良い味を出していて、読み終えた後には爽やかな気持ちになること間違いなしの一品だ。
(「魔法少女の物語」4選/文=柿崎 憲)