その高校生は今日も砂場に通い続ける

本作を端的に説明するなら、一人の男子高校生が子供をアイスで買収し公園の砂場を占領して日々奇妙なオブジェを作り続ける物語である。

……これだけだとよくわからないかもしれないが、本作ではそこにシンギュラリティや魔法少女という要素が関わってくる……ますますわからない。

そんな一見シュールに見える物語なのだが、最後まで読み終わると全てが腑に落ちる内容になっているから凄い。

スコップとバケツを持って公園に通い続ける現在、自称・魔法少女と出会った子供時代、とある研究者と妙に人間臭いAIの会話、これらのバラバラの3つのパートが最終的に噛みあうことでそれまで不可解だった物語に一つの答えが導き出される。これこそが科学である。

また犬型のAIが見守る公園の風景、変人扱いされる主人公と周囲の人々の会話、やたら詩的なアイスのフレーバー名、など作品を構成する要素がいずれも良い味を出していて、読み終えた後には爽やかな気持ちになること間違いなしの一品だ。

(「魔法少女の物語」4選/文=柿崎 憲)

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