抱えてしまったもの、どうしたら捨てられるっていうのさ。

主人公、失恋します。

失恋するところから物語が始まってくるので、
最初はちょっと重い雰囲気です。
しかし、しっかりした文章によって真摯に掘り下げられることで生まれてくる雰囲気なので、読み応えがあります。

それにその後、お寺さんにいって修行体験をします。
別のことをすると気がまぎれると言いますが、
まさに修行体験によって重い雰囲気は一度解きほぐされて、読者の気がまぎれます。
それから文章的にもさらっと読めるような話が入ってくるようになります。

というふうに、ずーんと沈んだ話が最初の数話続くので、
お寺さんに行ってほぐれるまでは一気読みした方が楽しめるかと思います。

幸い一話一話がそう長くないので、気持ちよいところまでそう時間もかからずに読めます。

もう一点見どころを挙げるとすれば、主人公の後輩、鹿野ちゃんですね。
可愛いし、切実です。
たぶんこの小説における人間の有りさま、あるいはこの世の人間の有りさまというものを、とんでもない直球で浮き彫りにしてくれる感じが彼女にはありました。
そこが魅力的で、心を奪われます。
彼女にぜひ注目してください。