なろうで連載していた時から読んでいました。ストレスフリーな作品が増えて些か食傷気味なときにたまたま読んで、度肝を抜かれた覚えがあります。
この作品は、ほかの小説が一文で済ませてしまう「努力」の過程を、巧みな情景描写と深く入り込めるストーリーで非常に上手く描いているように感じます。一つの目的のために、主人公はその他全てを捨て、殺し、犯し尽くし、最後には塔のように積みあがったカルマが残る。「努力」の安売りをしている昨今の量産小説と一線を画す作品です。
また、俺TUEEE的な、主人公一強体制ではなく、競い合うライバル、手の届かない強敵、挫折と敗北と屈辱を積み重ねてそれでも足掻く主人公の姿は、非常に傲慢ながらもそれに見合うよう身を削り続ける、読者の胸を打つ格好の良さがあります。
最近のストレスフリー作品に飽きた方や時間に余裕のある方は是非この小説を一読することをお勧めします。
群雄割拠の強者達が蔓延る世界。主人公が自らの業と向き合いながらも、目的の為に業の塔を築いていく。分かりやすく言えば、目的の為に手段を選ばない悪逆非道の悪魔みたいな奴である。
ありきたりな倫理観云々で語るならば、この主人公は『間違っている』と断言できる。だが、それらを超越した主人公の生き様には何かを感じざるを得ない。
少しずつ強くなり、徐々に立場も変わっていくというのも物語として見応えがあり、個人的にはドツボに嵌った。
テンプレは最初は面白いが直ぐ飽きる。だが、カルマの塔は寧ろ面白さが加速していく気さえしてくる。
登場人物が多くて分かりづらい所も一部あったりするが、この手の話では仕方ないだろう。
結局、何が言いたいかといえば、『面白い』。ただこれに尽きる。
賞賛の言葉が正に至高としか表現が思いつかない作品です。
私自身の語彙力もあるのですが、真に迫るほど言葉とは陳腐な表現しか出来ないのだと、実感しました。
復讐というネット小説ではありふれたジャンルでありながら、この短期間でその他幾多を追い抜かす程洗練された執筆、作者がこの作品に懸ける想いの強さがありありと文字を通して伝わってきます。
物語の構成力・言葉選びのセンス・情景・戦術・各所に散らばる知識の数々に作者様は多岐に渡る才の持ち主であられると愚考させて頂きました。
泥臭く正しくなく、決して綺麗では無いが、どこか美しくも思える主人公に心が動かされます、
今後孤高の白き獣が、どこまで上り詰め、そして数多の犠牲の末、どれだけの業を背負い塔を下り落ちてゆくのか、それが毎日の楽しみです。