恋×恋←恋
歓声に揺れる卒業式の中、世界で一人だけ違う涙を流していた。
直樹のことも奈々穂のことも見れなかった。
「実はさ、聞いて欲しいことがあって」
直樹の言葉を聞いたとき、柄にもなく心臓がキュンと締め上げられたのは今でも覚えている。
いつも一緒にいる奈々穂はおらず、二人きりだったから。その言葉の後、いつまでも恥ずかしそうに話しだせない彼に私の心は昂った。
だけど。
「奈々穂に告白しようと思うんだ、俺」
私の恋は、その言葉と共に崩れ去った。
それから、毎日のように相談を受けた。
廊下でも、帰り道でも。
奈々穂の話をする彼は本当に楽しそうに話していた。
私がこの気持ちを明かしても、きっと彼も戸惑うだろうし、何よりも今の私たちの幼馴染としての三人の関係はきっと二度と元には戻せなくなってしまう。
直樹も好き。奈々穂も好き。
だから、この三人で居れられる場所を壊したくなかった。せめて、卒業するまででも。
私が我慢するだけで三人でいられる。
私に彼の心が向いてくれないなら、せめて卒業までは。
そう思って、自分の気持ちが溢れないように抱え込んできた。
彼が小さい頃に好きだと言ってくれたこの長い髪も、明日には切ってしまおう。
きっと二人とも私が地元を離れた大学に進むことを知らない。
ああ、でも。この一年、三人で居られて幸せでした。
最後の一瞬まで、夢であってほしいと願ったことを懺悔します。
ああ、恋の神様。どうかいつまでも二人が幸せでありますように。
恋恋恋 無記名 @mukimei
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