戦争?そんなん勝手にやってくれ、こっちはもう仕事辞めてるから。

@akaki1103

第1話 昔話


昔々あるところに小さな女の子と男の子がいました。

女の子は天才的な頭脳を持っていました。

男の子は膨大な量の魔力を持っていました。


そんな二人は毎日仲良く、たった二人だけで遊んでいました。


ですが、そんな日常は突如現れた訪問者によって崩されてしまいます。

「ねぇ、君たち。おじさんと一緒に冒険しない?」

傍から見ればただの不審者。

普通の幼い子ならついて行ってしまいそうな笑顔。


けれど、その二人は違いました。

「ごめんなさい。わたしたちは、家に帰らないと、なので。」

そういうと、その場から立ち去りました。



「・・・実行しろ。」

その後に放たれた男の言葉はのちに恐ろしいものだとその身をもって体験することになります。



======


女の子は男性に行ったとおり家に帰っていました。

少し古びた木製の扉を開けると鉄の匂いが鼻をかすめます。

なんだろうと思いながらも、匂いのするほうに向かっていくと誰かの足が見えました。

お母さん、寝てるのかな。

そんな考えは横たわっている母の姿を見れば一目瞭然でした。


「おかあ、さん・・・?」

真っ赤に染まった元は白だった布。

いつもは美しく笑う顔も生気がなく、青白く染まっていました。


仮にも、天才的な頭脳を持っている女の子。

理解できないはずがありませんでした。

それでも分らなかったのはただ、理解したくなかったのかもしれません。

唯一の肉親だった“母の死”という現実を。



*****


同時刻、女の子と別れて同じように家に帰っていた男の子。

今から帰る家には孤児だった男の子を拾ってくれた優しい人がいます。

男の子は魔法技術をこの人から教わりました。

かつて『魔法使いの王様』と呼ばれていたそうです。

本当かどうかは男の子はどうでもよかったのです。

事実、男の子自身がみた魔法が『王様』と呼ばれるのにふさわしいと感じたからでしょう。


「ししょー」

「・・・」


いつもは返事が返ってくるはずなのにシン・・・と静まり返った家は不気味でした。

そして、男の子は怖くなり女の子の家へ向かいます。

いくら魔力が多くたって、力が強いからと言って何しも本人が強いとは限らないのです。現に男の子は怖くなると逃げだし、女の子へと助けを求めるシーンが何度もありました。


『強くなるチャンスはつくるものです。』

師匠の言葉がなぜか今胸に突き刺さりました。



=====


「お嬢さん?どうしたの?」


女の子が呆然と座り込んでいる中さっき声をかけてきた人がいました。

「・・・・」

唯一の肉親を失った今、声を出す気力も残っていませんでした。


その様子を見てか男性はニイッと笑いました。

「満足いただけたかな?どう、今の気持ちは?!悲しい?悔しい?ねぇ、どうなの?!」


女の子は思いました。

世の中には、不思議な人種がいるものだと。他人の不幸を喜び、目の前に死体があるというのに笑えるこの人はイカれてる。

それと同時にお母さんを殺したのはコイツではないのかとも。


どこか客観的に見ている冷静な自分がいました。



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