第2話 昔話
女の子は魔力が尽きるまで暴れ続けました。
途中からは視界が歪み、足元がふらつき、ガンガンと物音が響くようになりました。
それでも止めることはしませんでした。
今まで育ててくれたお母さんに何の恩返しも出来ていのに、もう何もすることもできません。
それでも女の子は男性には敵いませんでした。
男性の後ろにいる複数の人たちが重ねて張った魔法結界は一人の女の子には壊せないほど頑丈なものでした。
「なんでっ・・・」
その言葉を最後に女の子は倒れてしまいました。
「あとは魔力のほうだな。」
そういう男性の言葉にうなずいたのは結界を張った複数の男達だけでした。
*****
「あ、ぁぁあ、俺のせいだ・・・」
ただ一人草むらの茂みに隠れ女の子を見ていた男の子は後悔はするものの、動くことはできませんでした。
助けたいという気持ちに反して、ただ震えるだけの体。
気持ちには嘘を付けても、体だけは正直でした。
“動かない”
それが男の子が出した答えということです。
「あの、チビは何処にいる?」
「家を見てきましたがいませんでした。」
「ッチ・・・」
そんな会話を聞いてると今狙われているのは自分自身だということが分りました。
それに対してまた自分は震えて見つかるのを待つだけなのかと思うと、どうしようもなく、ダメ人間のクソ野郎だと思ったのも事実でした。
助けてほしい・・・
そんな願いは今、叶いません。
いつも頼っている女の子は今は頼れない。
師匠もいなかった。
絶望しかない中、男の子は決めました。
*****
男はいまだに見つからない男の子に対してだんだんとイライラしてました。
女の子はもう自分の手の中。
後はただのチビ。
この為に魔力、技術、知識がある人材を時間をかけて用意しました。
なのに見つからないとなればすべてが水の泡になります。
「そ、その子をはな、、放せっ!」
「!・・・あぁ、良いぜ。」
思いもよらぬ男の子の登場と男の返事にザワザワと嫌な空気が流れます。
「そのかわり、お前がつかまってくれるんだよなぁ?」
「・・・っえ、それは」
さすがにそこまで考えていなかった男の子は返事に詰まります。
それでも、女の子を助けるためにここへ出てきたのです。
今、自分が逃げれば絶対に捕まる。そして女の子も助からない。
ならば小さな希望にかけて自分がつかまれば。
「わ、わかった。僕が捕まる!だ、だからその子を放してくれっ」
「そうだな。まずはお前がこっちに来るんだな。そしたら放してやる。」
ニタニタと気味が悪い笑顔で話しかける様子は恐怖でしかありませんでした。
ガクブルと震える足でゆっくりと男へ近づきました。
その瞬間、頭に激しい痛みが走りました。
そしてゆっくりと男の子は倒れていきます。
「所詮、大人には敵わないガキだったってことだな。」
そういった男と小さな子供2人は姿を消しました。
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