第5話 離れ離れ


「えっと・・・確か2週間前ぐらいかなぁ?いやーちょっと最近ボケてきてよ、ごめんな正確には思い出せねぇや!」

「あ、いいのいいの!気になっただけだから。」

「お?そうか、それじゃ良かった。」

「うん、ありがと。じゃ!」


そういって手を振るとニカッと笑って手を振り返してくれた。つくづく此処の人は優しい人ばかりだと思う。


「エルー!!」

「お。お目当てのものはゲットできたか?」

「うん。おまけもついてきたし、それ以上の収穫が得られたよ。」

「それ以上・・・?」


エルには何のことか見当もつかないのか首を傾げている。

顔も整っているくせにたまに出る天然がずるいと思う私はおかしいのかね?うん?


「シェミエル居るかもしれないんだよ。」

「っは?え?アイツが?・・・嘘じゃなくてか?」

「うん。まだ確信は無いけどね、見たことある人がいたんだよ。残念ながら美女って言われてたけどね、」

「っふ・・・そうか、そうか。それはシェミに伝えないとなー・・・そうか、いるかもしれないのか・・・」


シェミがいればいいのに。

何回、何十回、何百回、何千回そう思ったか。

たった数人だけ私たちの味方、仲間だった存在。

ま、今そんな事思ったって確信は無いのに。



「行ってみるか。」

「そう、だね。」


街の雰囲気がシェミに感じるのは本当に存在するからなのか、それとも話を聞いてしまったからなのか。

それは行ってみないと分らない。





========




「これはすごいな・・・」

泉の周りは大樹から蔓が垂れ下がり、草花に囲まれ小鳥が何処からか綺麗な音色で歌っていた。まるで神の庭のような神秘的な場所だった。


「おじちゃん、こんなトコ来たのか・・・」

すこし騒がしいおじちゃんが来たとは信じられないような静けさ。


その時ブワッと風が舞った。

『静かな時の侵入者よ。今すぐここから立ち去れ。さもなくば自然の猛威を受けることになる。』


急にどこからともなく聞こえた声に固まる。


「えっ・・・こ、これは、なんというか・・・っぷ」

「いや、ちょ、笑っちゃダメ、だろっ・・・」


二人そろって笑うことに関しては許してほしい。

いや、だってさ如何にも面倒くさがりなシェミがやりそうで。



「ちょっと、何笑ってんのさ。」



「あ、ごめんってシェミ・・・シェミ?!」

「え、何。」

「久しぶりだな、シェミ。」

「うっわ・・・え、何エルもいんの。」

「いちゃ悪いか?」

「うん、悪いね。さっさとどっか行ったら?」

「なんだよ、淋しかったくせにぃ!!」

「は・な・せっ!!触んなよ、ねぇシルア。」

「・・・・」

「シルア?何?泣いてんの?」



だって、だってさシェミが目の前にいるんだよ。

元気にいつも通りにエルと言い合ってさ。

私が泣くと仕方ないなぁっていってさ、優しく涙を拭いてくれるんだよ。

綺麗な顔でサラサラな金髪を動かして笑ってるんだよ。

こんなの見て泣かないなんておかしんだよっ!



「そうだね、ごめんね。」

「ッこっちこそっ、シェミ達をっ・・・まも、れなか、った!なのにっ、シェミっは!笑って、なかった事にするんだ。もっと怒って私を責めてくれたほうがっ!!!・・」


泣いている私の言うことを静かに聞いてくれたシェミは静かに「それは違う。」と、きっぱりと言い張った。


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