第4話 僕と私

僕は必死に走った。

目を冷ましたあの場所へ

妹がいるうちに。


私は追いかけた。

あの猫は兄だ

そう思い必死に追いかけた。

もしかしたら兄にとっては、

迷惑かもしれない。


僕はあの家に早く帰りたかった。

妹のいるあの家へ

どうしても帰りたかった。

暴力を受けることのない

あの時間を取り戻したかった。


私は兄の気持ちなんて

知らなかった。

私に早くいなくなって欲しいと

思っている。

そう思っていた。

私も兄のことなんてどうでもいい

と思っていた。


正直妹のことなんて

どうでも良かった。

いつも僕より上をいく妹のことを

心のどこかで嫉妬していたんだ。

「いなくなるのがあいつだったら

よかったのに」

父のその言葉を聞いたとき

僕は笑っていた。

ようやく僕が必要とされる。

初めてだった。


私は兄を助けたかった。

どうしても、

殴られるのは私がいないから。


必要となんて僕はされなくていい。

心からそう思うことのできた、

二年間だった。

これからは間違わないように。


兄は足を止めた。

ゆっくりとこちらを見る。


「お兄ちゃん」

妹が僕に向かって叫ぶ。


兄は私の方に駆けてきた。


妹はゆっくりと手を伸ばす。

「帰ろう、お兄ちゃん」

妹は僕を抱きかかえるとそういった。


「ニャァー」

兄はそうしようと言っているようだった。


家に帰ると妹から話を聞いた。

どうやら一年後には戻れるらしい。


そして一年後

兄は人に戻った。

両親はとても不思議がっていた。


妹は無事志望校に合格できた。

猫になっていても

勉強していたらしい。


僕と妹、私と兄は

それからはお互いが楽しく生きていくため、

努力した。


両親は私が戻って前に戻ったが、

僕への態度が明らかに変わっていた。

「これからはうまくやっていけそうだ。」

兄はそう言うと楽しそうに

部屋へと戻っていった。




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僕と猫と私 春レタ @haruleta

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