第2話 僕が猫

「猫がいなくなった」

それは僕にとって大きな問題だった。

唯一の心の拠り所がいなくなってしまった。

「探しに行ってくる。」というと

「お前は勉強しなさい。」

と父に腕を掴まれた。

僕はそれを振り払うと

勢いよく家を出た。

初めての父への反抗だったかもしれない。

そんなことを思いながら

僕は猫を探した。

しかしどこを探しても見つからない。

僕は泣きながら探した。

もし居なくなってしまったら、

また前のように戻ってしまう気がしたから。

疲れからか少しづつ意識が遠のく

もう駄目かもしれない。

そんなことを思いながら探し続けた。

ふと気付くと朝だった。

起き上がろうとするが、

なぜか二足で立ち上がれない。

カーブミラーに映る自分の姿を見て驚いた。

あの猫になっていた。

今後どうしよう

僕の体はどこに?

そんなことを考えながら僕は家に帰った。


家の戸をペシペシと叩く。

すると

あの日いなくなったはずの妹が

出迎えてくれた。

「おかえり、どこ行ってたの?」

優しく響くその声は妹そのものだった。


僕は自分の部屋へ駆け込んだ。

「なんにもない」

そう言おうとしたが

「ニャァー」

としか話せなかった。

「そこはお兄ちゃんの部屋だから

        入っちゃだめだよー。」

そう言って僕を抱きかかえ、

「もう帰ってこないけど」

と小さく言った。

僕はどうしたんだろう

そんなことを考えながら

僕はまた家を出た。

今度は僕自身を探しに。

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