日本酒を少々
四度目のデートは郊外まで車で出かけた。目的は日本酒の酒蔵だ。お見合いの席で魔法の話題になったとき、彼女が「日本酒も少々」と話していたからだ。
少し離れた大きな駐車場に誘導され、酒蔵までは送迎バスで移動した。通りに面した古めかしい入り口には、青々とした新しい杉玉が吊るされている。新酒の試飲イベントなのだ。
受付順にグループに振り分けられて、酒造りの工程を見学する。最後に試飲コーナーがあった。僕は運転手を示すシールを胸に貼られていて飲めない。彼女はおいしそうに全ての酒を試飲していた。
「私ばっかりごめんなさい」
ほんのり頬を染めた彼女は、売店で仕込みに使われている天然水の瓶詰を買った。
「おみやげ、私の魔法で作った日本酒でもいいですか?」
「ええ、もちろんです!」
彼女は微笑むと、瓶を軽く振る。ぱっと見では日本酒かどうかわからない。差し出された瓶を受け取り、僕はおそるおそる尋ねる。
「せっかくなので、一緒に飲みませんか? 僕の部屋で」
彼女は一層頬を赤くし、そっと俯くようにうなずいてくれた。
魔女の嗜み 葉原あきよ @oakiyo
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