内容もいいが、それ以前に文章がおもしろい。
散文詩的な個性がある。
文章と内容のつり合いもよい。
カクヨムで、内容がよいと思った作品は多いが、文章がおもしろいと思った作品は数作しかない。
その一作がこの作品。
読んだ範囲だけの話になるが、カクヨムの書き手の技術は低くないと思う。
誤字脱字は少なく、破綻していたり、文意がつかめない文章はあまり見かけない。
ただし、個性のある文章、文章自体を楽しむ作品には、あまり出会っていない。
しかし、これには理由があると思う。
多くの人に読んでもらおうとすれば、文章の個性がじゃまになるときがある。
また、技術が不足しているのにもかかわらず、文章に個性を求めると、作品がわけのわからない詩になってしまう。
カクヨムで書かれている文章の多くは、たとえるならば、夕方のラジオ番組で採用される、メールやはがきの文章に近い。
家族で聞いても問題のないテーマに適した文章。
それと比較すると、この作品の文章は、コアなリスナーをもつポッドキャストの番組で、採用されているような文章かもしれない。
こういう作品が、もっと増えればよいと思う。