根源的な問いを突き付ける、大人のための残酷なお伽噺

どこか戦後日本の政治状況を思わせる「戦争の英雄と博愛の英雄」
愛と自己犠牲の意味を問う「棘の靴をはいた少女」
人生を投げ出そうとした少年に訪れる不条理劇「第二の人生」

「人を指差して笑うとき、三本の指は自分を差している」という言葉を思い出しました。
三つの物語に登場する人物達はいずれも愚かで滑稽ですが、少し考えれば彼らと同じ愚かしさが自分自身や身近な他者の中にもあることに気付くはずです。
善と悪とは何か?、真の愛とは何か?、人生とは何か?
言葉に出せばどこか手垢の付いた陳腐さを纏う、しかし根源的な問いが、短く読みやすい物語の中に、まるで優雅なドレスの袖に隠された短剣のように突き付けられる、そんな大人のための御伽話です。