この作品集を読みながら「詩を読むとは、どういうことだろう」と考えていました。
自分はあいにく詩に疎い人間です。詩を読むための基礎的知識や教養すらない。
それでもここに連ねられた数々の言葉に、心がふいにさざ波立つのを抑えられませんでした。
渾然一体となった原初の未分化な世界から、人は言葉によって自らと世界を分かちました。楽園を追われたアダムとイブのように、人は言葉によって孤独になったのです。
そのとき世界から分かたれた人間の発した言葉は、やはり詩のようであったのではないか。
ここに書かれているのは作者の個人的な心象風景ですが、個を深く掘り下げれば必然的に何らかの普遍へと至ります。
言葉によって世界から分かたれた人間の祝福と呪い、孤独と誇り、喜びと悲しみが、詩人の心象風景の向こう側に広がっていて、それは遠い残響のように読者の心に伝わって来る。
それに耳を澄ますことが詩を読む歓びであり、また意味なのではないかと、ふとそんなことを思いました。