概要
無いもせぬ彼女は、それゆえに災厄の扱い方を知っていた。
空気よりもずっと薄く、そこに『いない』ことだけが唯一、彼女が生きていくための手段だった。
そんな彼女は、人生の終焉を前にして初めて自らの空虚さに対面し、そして一つの『災い』を遺す。
そんな彼女は、人生の終焉を前にして初めて自らの空虚さに対面し、そして一つの『災い』を遺す。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!その災厄は祈りにも似て
これは、『いない』ものとして周囲に扱われてきた彼女の、胸の裡に秘められた物語です。
『いなくなる』こと。
ただそれだけを羅針盤のように抱えて生きてきた彼女に、病という本当の終焉が訪れます。そこで彼女は、真実がらんどうになってしまった自らの『箱』の中身を埋めるべく、あることを実行しようとする--。
空虚だったふたりが交差したことで、
想像しえなかった未来がつくられる。
たとえば、朱と青を混ぜると紫になるような不可思議に似ています。
それはとても愉快で、尊いものではないでしょうか。
ひたひたと迫りくる死を、朗らかに、そしてある種の嗜虐性に満ちた感情をもって受けとめる彼女は、たくましくもあ…続きを読む