第4話 届かない声

 夢か。


 ゆっくりと起き上がった脳みそで到達した結論はそれだった。


 「ほら、行くわよ」

 

 催促する麻衣の声に引かれ、頭をオムライスに切り替えて咲太は自分の部屋を後にした。



             〇    〇    〇



 そう、夢なんだよ。


 でも、夢なんだ。


 日記でもつけていれば良かったのに。


 ちょっと、昔のことを思い出せば良かったのに。




 梓川咲太は夢を見ていたのだ。


 人は夢を見ている時に、無意識に意識を整理する。


 人の意識は大きな力を持っている。


 その意識は世界に働きかける。


 不安、嫉妬しっと、悔しさ、そして――願い。


 麻衣が、理央が、のどかが、かえでが、花楓が、翔子ちゃんが、翔子さんが、咲太がそうであったように。


 

 

 始まりなんだよ。


 夢は、意識は、もう世界に働きかけたんだ。


 夢を見たんだろう。


 それは、これから君が出会う世界なんだ。


 気をつけろよ。




 それでも、目下もっか、梓川咲太はリビングでオムライスをほおばっている。

 

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青春ブタ野郎は青春ブタ野郎の夢を見る 秋山洋一 @NatuMizu

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