だいたい正しいけど、致命的に間違っている

  • ★★ Very Good!!

たとえば、今でも、2003年-2009年ごろ全盛期だった Arcadia の捜索掲示板の、原作ごとのスレッド総数を見れば予想が付くと思いますが、まずエヴァ二次の流行期(1998年-2005年ぐらい)とKanon(というか葉鍵)二次の流行期(2003年-2007年ぐらい)では、エヴァ二次の方が、盛り上がりが上でした。それも、圧倒的に、です。Kanonの方が後発なので、Kanonの全盛期と、Kanon全盛期時点でのEVAの盛り上がりを比較すれば、それはKanonの方が上でしょうが。

しかも、Arcadia の捜索掲示板で「戦国 現実 EVA」で検索すれば分かりますが、Kanon が流行り始める前、2002年の時点で「現実→EVA」もの(今で言う異世界転移)が一ジャンルとして確立していました。(「戦国時代+エヴァ小説リンク」という、個人サイトを集めた当時のリンク集で、「現実→EVA」が分類の一ジャンルとして使われている。尚、「戦国時代+エヴァ小説リンク」のページ自体は今も生きています)

しかもEVAの異世界転移や逆行の基本パターンは、神(や、超常の存在として覚醒した綾波レイや渚カヲル)の力で転移や逆行をするっていうものでしたし……。今で言う神様転生ですよね。

主人公魔改造(今で言うチート能力)も、EVAの時点で「とりあえず神になってほぼ全能になったシンジ」や「ルシファーの力を継承した銀髪オッドアイの、原作主要人物に復讐を誓う逆行スーパーシンジ」などが、たくさん、たーーーくさんいました。Kanon の U-1 でも魔改造ぶりでは(中々)スーパーシンジには勝てなかったと思います。

キャラの元ネタがEVAなだけで、EVAじゃなくても成立する作品も、Kanonが世に出た時点で、既に大量にありました。実際、たとえば「戦国時代+エヴァ小説リンク」のEVA小説(ファンタジー)で紹介されている『あやなみ』は、作品解説が【帝国軍少年少佐碇シンジは新造艦の「あやなみ」と出会う。インタフェースにより、人間の心を持ち、10代の女の子にしか見えない彼女。そんなシンジと「あやなみ」の宇宙の長い航海が始まった】というものですが、掲載ホームページ(トップは今も生きている)に行くと、Last Update が1999年です。1999年時点で、沢山の個人サイトで、このように、色々なエヴァ小説が有りました。

ハーレムも、ね……Allの方のLAS(ラブラブ・みんな・シンジ)が一大ジャンルでした……。(Aはオールの場合とアスカの場合が有る)

という訳で、Kanonの立ち位置は、実際は、「EVA(とナデシコ)で作り上げられて完成した典型パターン(主人公魔改造、本編再構築、逆行、ファンタジー、学園、アフター、転生・転移、SF、ハーレム、などなど)を、Kanonが継承し、更に発展させた」という所でしょう。特にファンタジーは、Kanon小説と言えば半分はファンタジーという感じでした。今でも見られる『カノン王国聖戦記』など、EVAファンタジーでは滅多に見られなかった大長編も沢山ありましたね。今のファンタジーのテンプレの雛型は Kanon で出来たと言っていいと思います。

(追記)

ところでテンプレ噛ませキャラ(ネタ)の特徴に「銀髪オッドアイ」っていうのがありますよね。あれ、上にも書きましたけど、元々エヴァ二次のテンプレ主人公でした。昔は実際に格好いい主人公として銀髪オッドアイのキャラ(主にシンジやオリジナルキャラ)が設定される事例も多かったんですよ。それも、かなり妥当な理由が有って。

エヴァ最終盤(劇場版を含む)で、人間の形をした超常の存在として、綾波レイと渚カヲルが居ました。二人の髪は青~銀髪で、瞳は赤色でした。これはエヴァの物語中で、使徒(天使)の力を持っている事を示すキーカラーでした。そして、テンプレのエヴァ小説、特に逆行ものでは、主人公は、綾波レイや渚カヲルに力を貰う等して、元々は人間でありながら、天使や神に近づいた存在になっていました。結果的に、髪が青~銀髪へ、そして瞳は(元々は人間なので片方が)赤色に変化しました。ここに、銀髪オッドアイが完成した、という訳です。で、これが中二心からか更に進化し、痛々しいセリフ等が使われる事も増え、あのテンプレキャラクターが出来た訳です。

やがて銀髪オッドアイというのは、痛々しい主人公のテンプレとして確立し、エヴァの設定が何も関係ない所にまで広がって、今や銀髪オッドアイである理由も分からない謎のテンプレキャラクターとして成立してしまっています。

結局、web小説の源流は、ほぼ全てエヴァにあって、ほぼ全てエヴァで確立していた、という事だと思います。

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