最終話

 放課後、茉美に呼び出された。

「ねぇ、カノン話したいことがあるの。」

 茉美は、今まで見たことないくらい真剣だった。二人きりになった教室は、思ったより明るくて、暖かい色の光の筋が、暗い黒板を照らしていた。

「ねぇ。」

茉美は、おもむろにスマホを取り出した。

「これ、アップしてもいいの?!」

茉美は、私に泣きそうな顔で、ずいっとスマホをつきだした。

 そこには、さやかと、私と、茉美でお揃いで買ったブラを着けた、あられもない格好の茉美が写っていた。

「なっ…」

私は、驚きのあまり言葉を失った。私を怒ったようににらむ茉美の瞳に大粒の涙がたまり、目元を膨らめ、ポロポロと、机の上に落ちた。

「なに言ってるの?!ダメに決まってんじゃん!茉美のこんな姿知らない人に見られたら…バカなことしないで!」私は、声を荒げて、つい爪を噛んでしまう。

 いつもにこやかでかわいい茉美が、知らない人からベタベタと汚ならしい視線で見られるのがいやだった。

「私だってやだよぉ。」

私は、茉美の言葉にハッとした。

「私だって、カノンのこと気持ち悪い目でみてほしくないよぉ。やだよぉ、みんな死ねばいい!」

茉美は泣きながら、言った。

「…なに言ってるの?」

私は、とぼけた。

「お願いだから、もうあんなところに写真アップしないで!お願い!やめないと、これ、アップするから!」

茉美の瞳からあとからあとから大粒の涙がこぼれるのを見て、私はたまらない気持ちになった。

目頭が熱くなって生温かい水が頬を伝うのと同時に言葉がもれた。

「茉美、ごめん。ごめんね。」

私には、茉美がいたね。心配させてごめんね、こんなことさせてごめんね、茉美の言葉に私の崩れた感覚は取り戻される。



 私たちが泣きはらした顔で教室を出ると、そこには、なぜか泣いてるさやかがいて、「なんで、さやかまで泣いてるのよぉ」と、二人で言いつつまた泣いた。



外に出ると、憂鬱そうな灰色の雲が空をおおってて雨が降りそうだったけど、私たちは、雨降る前にかえるぞー!やべぇ!スカートめくれるー!と笑いながら、校門をはしりぬけた。


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制服 三枝 早苗 @aono_halu

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