最高の「好き」を表すため、オタクはダンスを選んだ……!

 那須塩原市のとある祭。そのステージへ上がるはずだった高校のダンス部を差し置き、姿を現した冴えない少年がいた。そしてアニメソングに乗ってキングタット——肘、手首、指をパズルさながら組み合わせていくダンススタイル——を演じ、人々を魅了した彼の名は二戸クリス。アニメソングダンスバトルに自分の活路を見出した、所謂オタクである。

 アニメソングダンスバトルは日本発祥のダンスカルチャーです。クリスくんは自分を生かすものはこれだと思い定め、その路へ踏み入って行くわけですが。有り様がね、まさにオタクなのですよ。他人と関われないから独りで暴走して、常識に疎いから失敗して、それでも自分を認めて欲しいから全力で突っ込んでいく。正直、これほど「等身大」という言葉の似合う主人公はいません。オタクなら誰もが共感させられる最高のキャラクター、目が離せるものですか!

 そんな彼がダンスの中、自分以外の誰かとなにを育んでいくものか? ぜひその目でお確かめを。


(「ダンス! ダンス! ダンス!」4選/文=高橋 剛)