体感時間をどれだけ伸ばせるか

またたび

体感時間をどれだけ伸ばせるか

私は5分をどれだけ体感的に伸ばせるかを考えていた。つまらないことをしていると時間は長く感じると言う。ではつまらないことをしてみよう。


その1


一人しりとり



しりとり、りす、すいか、かもめ、明太子、コアラ、ラクダ、ダウィンチコード、ドグラマグラ、ラッパ、パラダイス・・えっと、うーん、スカイ・・いや、これはちょっと今の気分的に嫌だな、別のにしよう。す、す・・水槽、占い、猪鹿蝶、右往左往、ウノ、のこぎり、りす・・あっ、これ最初に言ったな。どうしよう、出てこないや。そういえば、あれからどれくらい経ったかな・・


体勢を変え、無理矢理に腕時計を見てみると1分しか経っていなかった。


ある意味、成功か?でもさすがにこれだけだとちょっと味気ない。よし、次行こう!


その2


羊を数える



羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹・・


心の中のイメージで羊が増えていく。ふわふわしているその体に魅かれるものはあるが、今はそれが目的じゃないので我慢。しかし、羊が50匹くらいになった頃


「メェー」


そう鳴きながら急に1匹の羊が上昇し始めた。どんどん上へ向かっていく。それにつられて周りの羊達も風船のように浮き始める。


「メェー」 「メェー」 「May」


「みんな!い、行かないでくれ!せめてそのふわふわを触らせてから・・それに空は危険なんだ!高いところなんか行ったって良いことなんかない!早く降りてきてよーー・・」


そんな願いも叶わず、羊は全員いなくなってしまった。まあ、イメージ内の話だけどね。さて、どれくらい経ったかな?なんとか食いしばって、腕時計を見てみると2分経っていた。あと少しで5分経つ。体感時間を伸ばさなくては・・さて、あともう一工夫。


その3


ツイッター



スカイダイビングを始める前にスマホで見ていたツイッターの内容を思い出す。


「あれっ、あいつ彼女といちゃついている写真を投稿してるぞ」


滅べや、リア充。


「あれっ、こいつ別れたんだ」


ナイスだ、達吉。


「あっ、えっと・・『数分前に投稿したツイートはドッキリでした♪まだ付き合ってます』だって?」


滅べや、達吉。


「あっ、えっと・・『ここで悲しい報告。先ほどのツイートを見た彼女が本気で怒って僕と別れようとしている。冗談も分からないとは・・もういいよ!そっちがその気なら、こっちから別れてやるさ!』だって?」


ナイスだ、達吉。



・・

気も紛れたし、体感時間も伸ばせた。ありがとう達吉。おかげで少しだけ寿命を伸ばせた。それにしてもまさかパラシュートが故障するとは・・着陸までは落ち始めてから約5分くらいはかかる。そしてそろそろ5分だ、地上も見えてきた。走馬灯とやらを体験出来るのかと思ったのに、体験出来ず。だから5分間はあっという間、人生の最後の5分間はあっけなく過ぎるのだと悟った。だからなるべく長生きしたくて体感時間を伸ばそうとは努力したものの、さすがにもう限界らしい。今更だが、高いところなんて来るもんじゃないな。


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