第29話 【物理】理系と電力
「うう......」
「どうしたんだそんな縮こまって。いつも天上天下唯我独尊を背負いつつ、肩で風を斬りながら歩く君にしては珍しく」
「ちょっと黙って。久々に会ったかと思えばどんだけ饒舌なのよ!寒いの!いま!私は!」
「たしかに、2月に差し掛かって冬も本番だからなあ。あ、時系列に関しては不問ということで」
「どこ見て喋ってるのよ」
「しかしこんな季節だ。エアコンもストーブもないと生きていけないな」
「そうねえ、でもこの前三丁目の池田さんの家から煙出てて、その原因がストーブから発火したからなんですってね」
「いや池田さん誰だよ。まあ、ヒーターは発火してもおかしくないだろうな。他にも消費電力が大きい暖房器具は、コードから思わぬ発火があるから注意が必要だ」
「よくテレビに出てるあの人よ。というかそもそも消費電力ってどういうものなんだっけ?」
「君はテレビに一体何人の池田さんが出てると思ってるんだ。消費電力というのはその家電が単位時間あたりに使う電気エネルギーのことだ。厳密には別の表現だがざっくり言うと、電子の個数を表す電流と、一つ一つの電子の勢いを表す電圧を掛け合わせると電気を構成しているひとかたまりの電子のエネルギー、つまり電力が計算できる。そして家電の消費電力の単位は1時間あたりに何キロワット発生するかということで[kWh]なんかは使われる」
「なるほど、量×質ってわけか。じゃあ電気エネルギーが高い方が熱を持ってるのね。ちなみに池田さんはあれよ、大学生ながら商品の宣伝とか旅行とか取り上げられてるあの人よ」
「というより、消費電力が高い方が大きな熱エネルギーに変換しうるというわけだ。だから何かの拍子でコードが破損したら、有り余る電気エネルギーが熱に変わって大惨事になるということだ」
「なるほど納得〜。私も池田さんみたいに電化製品の近くで洗濯物干すのやめるわ」
「ああそれがいい。池田さんでも、時として人間はやらかしてしまうからな」
「そうねえ、でも家でスライム風呂とかしたりする人だし、普通に生活してれば問題なさそうかな」
「いや池田さんユーチューバーじゃないか」
「干してたズボンも100均らしいし、電化製品もゴミ捨て場から拾ったものらしいしね」
「限界大学生もやってるのか、それは人気もでるわ」
理系くんと文系さん 名取 雨霧 @Ryu3SuiSo73um
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