夜と朝の狭間にある空の下で、君と話す物語

「僕はこの時間が好きだった。朝とも夜ともつかないこの時間は世界は止まっているように感じられるからだ。」この部分、凄く共感できます。この時間帯は、人も車もなく、空気も澄んでいて、ディストピア感があるんですよね。主人公は対人関係に難儀してそうなので、世の中から切り離されたような感覚は、一種の救いにもなっているんじゃないかなと思います。

主人公は日課の早朝徘徊。女の子はランニングの途中に丁度出会ったのかな。女の子は日に焼けているので、室外でやる競技。もしかしたら陸上部かもしれない。そして、声をかけたのは女の子からだったりして。積極的な女の子のアプローチで、主人公は心を開き、お互いの共通項である物語で意気投合したんでしょうかね。

人間関係に手こずっている人ほど、心のどこかでは人の温かさが欲しいもの。人通りの少ない早朝に運命の出会いを果たし、仲良くなるという展開は、素敵です。

極めつけは、「君の話がなくなっても殺さないし、そのときは私が話をしてあげる。」の部分、この言葉で、自分は早朝にしか出歩けないし、もしかしたらいつか会えなくなる時が来るかもしれないと不安に思う主人公は救われたと思います。

朝焼けが指す前の空の色の表現にアイスブルーを選ぶ作者のセンスがすごく好きでした。夏の朝は、どこか静謐で、透明なんですよね。

もしかしたら的外れな考察かもしれませんが、この短い文章の中に、色々と想像できる楽しみがあります。そして情景が綺麗に描写されています。

読者の想像を膨らませてくれるよい作品だと思います。