「恋」の話だと思ったら「家族」の話だった。

僕は最初、主人公が遊里で、この話はマッチングアプリを利用した「恋」をテーマにした話だと思った。

しかし、それは間違いだった。何度か読み直し、主人公はおそらく杏心なのではと感じた。そして、杏心は遊里に大好きな姉である心乃花を成仏させてほしかったのだと僕は気づいた。

心乃花の証言で、杏心がマッチングアプリを始めたのは心乃花がきっかけだと語られている。幽霊になった彼女の代わりに、心乃花の好きな相手と付き合うのだ。おそらく、お姉さんが成仏できない苦しさを解消できるのは自分だけだと思ったので、杏心はずっと解決策を探していたと感じた。
この時点で、僕は杏心をお姉ちゃん好きの良い妹だと思った。

心乃花が杏心に自分の好きな人を任せたのも、杏心が心乃花と遊里を二人にしたのも「家族」として信頼し、愛していたからこそなんじゃないかと思う。
だとすると、心乃花が消えた段階でこの話が終わるのも自然だ。杏心の目的は果たされ、この後は語られることのない遊里と杏心の日常が始まる。
おそらく遊里は杏心を幸せにするだろうし、杏心もお姉ちゃんが好きになった男である遊里をちゃんと愛してゆける。
そんな余韻の残る作品だった。

後、僕は心乃花さんみたいな色気と茶目っ気を両立したお姉さんが大好きであります。
よろしくお願いします。