永遠に繰り返される刹那の夢、その先には。

誤解を恐れずに告白すると、この物語は
永遠に繰り返される優しい白昼夢の様な。

例えるなら、高校生の頃。ひとり窓から
校庭の木々の煌めきを見つめる。その
何とも物憂げでいて心地良い 瞬間 の、
いつ終わるでもない継続を思い出させる。
それは、ある種のモラトリアムであって
いずれ跡形もなく消え去るのを予感しつつ
木々の葉が煌めき揺れているのを、只々
見つめている、そんな感覚を呼び覚ます。

尤も、物語自体は、とてもぼんやりなど
してはいられない程に、どんどん展開に
惹き込まれて行く。

社会の規約の中に暗号化された 目的 を
炙り出す為の 試験 が行われる。
絶対権力の許、理由など明かされないが、
義務 として従わざるを得ない。殊更に
無力な 高校生 である主人公達にとって
抵抗する事など出来はしない。

時折、紛れ込む不思議な記憶。

未知の相手との接触という冒険は、期待と
不安とが入り混じる。用意周到に決断する
が、其処でふと、仲間の存在に気付く。
思っていた程は 孤独 ではなかったと。

物語は、更に大きな陰謀へと繋がって行き
終幕へと加速して行くのだけれど。

其処に居るのは、何ら変わりのない自分。

その姿が一夜にして途轍もない価値を孕む
皮肉さえ、果ては暗号化され曖昧に隠蔽
されてしまうのかも知れない。それでも
確かなものは必ず目の前にある。

読後のカタルシスと福音を。