第4話 暗器使いに……
「さ、入るぞよ」
紅く長い髪の毛を払いながら言った。満足そうな顔である。どうやらこれがアウラ様のキメ顔らしい。
「さ、入るぞよじゃないですよ魔王様!」
「む?おお、来ておったのかヴァンクよ」
その時、声が聞こえたのでそちらを見るといつの間にそこにいたのか1体のゴーレムがいた。3メートル以上の巨体で黒の岩肌に身を包みごつごつとした印象を受ける。胸のあたりには紫の宝石が埋め込まれていて時節それが怪しげに光っている。
「何故ここにエルフがいるのですか!ここは由緒正しい魔王城ですよ!」
「そんなものわかっておるわ。しかしな、わしの部下といえばお主を含めても6人しかおらぬだろ?それでは戦闘要員が少なすぎると思っての。だから連れてきたのじゃ」
6人しかいないの?!え、でも確かに魔王様だって……
「しかし……」
「ええい、うるさい。そんなに言うのなら……」
「失礼しました、ご容赦ください。」
ふん、と鼻を鳴らすと再びこちらに向き直り説明してくれた。
「およそ200年前のことじゃ、魔族同士で権力争いが起きてわしらも戦ったのじゃがの負けたのじゃ。それでここでひそかに力を蓄えておるのじゃ。いつの日かわしが父上のような立派な魔王になるために」
「そんなことが……」
でも私は魔法が使えないエルフだし……。もっと他に適役がいると思うんだけど。
「なんじゃ、自身が持てんのか?」
「はい。戦力になりませんよ私、魔法が使えないからエルフの村を追い出されたのですし」
「ん?何を言っておるのじゃ。ルナにはスキルがあるではないか」
スキル?はて何のことを言っているのだろう。
「はあ、これは予想外じゃ。おいヴァンク、こやつにスキルを教えてやれ。わしは疲れたから寝てくる」
ふあっとあくびをして出てきた涙を拭うとおぼつかない足取りで城に入っていった。かわいい。多分今の私の表情は(*´▽`*)こんなことになっているだろう。
一方、表情のわかりにくいヴァンクさんは私でもわかるくらいに苦笑いを浮かべている。
「まあ、魔王様のご命令ならば致し方ない。これからよろしく頼むぞルナ殿よ」
「よろしくね、ヴァンクさん。それと私のことはルナでいいよ」
「わかった、では早速だが闘技場へ向かうぞ」
こうして私は魔王城での生活?が始まった。
「よし、始めるぞルナ」
「はい、よろしくお願いします」
というわけで闘技場にやってきた。入って下から見上げるとドームのような形をしていて広さは結構あるようだ。そしてこの闘技場のすごいことその1、とても防御力がある。魔法を外からバンバン打たれてもある程度防ぐことができるらしい。その上、迎撃システムなんてものもある。もうこれは闘技場ではなく要塞ではないかと思う。そしてすごいことその2、闘技場内部の地面は土でできているのだがこれも魔法で地形変化をできたり気温なども変えることができるらしい。
「そういうわけで少し食べさせてもらうぞ」
「え……え、え?!」
すると私の体はがっしりとした手につかまれるとヴァンクさんの口の中に入っていった。
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しばらくお待ちください……
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「もうひどいですよヴァンクさん!もう少しでトラウマになるところだったじゃないですか!」
「すまない、しかしルナのステータスを見るためには仕方ないことなのだ。許してくれ」
「ちゃんとそういうことは先に言ってください!それで何かわかったんですか?」
「ああ、これを見てくれ」
差し出されたのは一枚の紙だった。そこに書いてある文字を読んでみる。
ルナ エルフ族 18歳
【スキル】
武具貯蔵庫 Lv2
短剣 ロングソード
【魔法】
なし
ふむふむ、魔法がないことはわかっていたけどこのスキルって何だろう。武具貯蔵庫?どういうこと?
「この武具貯蔵庫というスキルは世間ではアイテムボックスの劣化版と言われているものだ」
「え……」
魔法でも駄目だったのに唯一あったスキルでも劣っているの?!じゃあ、私どうやって戦えば……。
「あー言い方悪かったな、1から説明するぞ」
「はい……」
あまり期待せずに聞こう。
「ルナのスキル、武具貯蔵庫というものは一般的なアイテムボックスとは違い武器しか入れることができない。いいや、それどころか外部から入れることすら不可能だ」
やっぱり劣るんだ……。それに入れることができないなんて何の使い道があるというのだ。
「しかしだ、このスキルの最大の特徴はレベルが上がるごとに武器が貯蔵されていく点にある。これはすごいことだ、なぜならこのスキルには限界がなくどれだけでも武器を貯蔵することができるからだ。その上……」
「その上?」
「このスキルを発動すれば自分の任意の場所に出すことができる、つまりこれに向いている職種は暗器使いだろう」
暗器使い?何それ。でも響きは嫌いじゃない。
「暗器使いとは何種類もの武器を使い戦う者のことだ、ルナにふさわしいではないか。それにルナには持ち前の運動神経がある、それを生かすにはうってつけの鞘腫だと思うぞ」
「暗器使い……」
それが魔法が使えない私が唯一戦える方法。つまり、アウラ様の役に立つことができるということだ。
「では、私を鍛えてください。私はどんな過酷な試練にでも立ち向かいます!」
「本気のようだな、貧弱なエルフとルナは違うようだ。よし、特訓を始めるぞ」
暗器使いになるべく長い特訓が始まった。
魔王軍の暗器使い ネムリア @nemuria
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