第3話 その先にあるもの

あれから1時間ほど歩き洞窟の前にたどり着いた。特に何の特徴もない洞窟だ。


「よし、ここじゃ。入るぞ」


こくりと頷き後を追う。洞窟内の道はいくつにも別れ一人でいれば迷いそうだ。なのでしっかり離れないようにする。


「ふむ、着いたぞよ」


「ん?この先は壁ですよ」


トントンと叩いてみるが何も起こらない。周りに仕掛けのようなものでもあるというのだろうか。

すると少女は前に出て左手を壁に当てると目を閉じた。


「……?」


まさか扉が開くように道が開かれるのだろうか。はたまた魔法でなにか……!


期待を寄せる中何故か少女が右手の拳を握った。……え、まさかとは思うけど……。


ドゴン!と音がして砂埃が舞う。数秒後、視界が良くなるとそこにあったのは少女が壁があった場所に向かって拳を突き立てた姿だった。


「よし、壁がなくなったの。この先が……って何を呆けておる」


「え、だってこういうときって合言葉か何かで開けるものだと……」


「……?何バカなこと言っとるのじゃ、ほれここを通ればすぐじゃ」


少女がそう言うので壊れた壁をのぞき込むと確かに通路がつながっていた。歩いていくと光が見えてきた。その先を抜けるとそこにあったものは――


「ここが我が拠点、魔王城じゃ」


「魔王城……」


深淵にあるといわれている魔王城がこんなところにあるなんて。


「おっと、わしとしたことがうっかりして自己紹介をしておらんかった。まずはお主の名前を聞かせてもらおうかの」


名前……私の名前ってなんだっけ?いや、名前で呼ばれたことなんてこの人生であったことすら思い出せない。


「私は……いえ、昔の名前はもう捨てました。私を救ってくれたあなたからの名前が欲しい」


言い訳だがこう言うことで名付けてくれるだろう。それに私はもう過去を振り返りたくない。


「ふむ、そうか。なら、ルナと名乗るがよい。」


「ありがとうございます」


新しい名前を頂いた。これで私は新しい人生を送ることができる!


「次はわしじゃの」


感激に涙が出そうになっていると、こほんと咳払いをした少女がにひっと歯を見せて笑った。そしてない胸を張りながらこう言った。


「我こそが第132代魔王アウラ=サタニキアじゃ。これからよろしくのルナ」


「よろしくお願いします魔王様」


「魔王様とは堅苦しい、特別にルナだけはアウラと呼んでもよいぞ」


「ありがとうございます、アウラ様」


この日、私は人生で最高の瞬間に出会えたのだった。

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