鬼の娘

　神聖皇国『旭光』。神話が実在するこの国は『鬼』と称する異能の力を持つ者たちに支配されており、平民である我々人間からは尊敬と畏怖を込めて『鬼族』と呼ばれていた。
　私の父はまさに最上級の名家『十鬼族』のうちの一つの侯爵家の当主だったのだが、その娘である私は実は鬼ではなかった。
　なぜなら私は養女でありしかもただの人間でもなく、何と鬼の天敵であり『裁きの神』でもある、聖なる『巫女姫』の末裔だったからだ。
　さらには鬼族である父のほうも、実の親兄弟であっても交わり合い喰い殺し合うという鬼とはとても思えぬほどきわめて紳士的であり、そして実際にも本物の父親以上に溢れんばかりの愛情をこめて、哀れなる孤児だった私のことを慈しみ育ててくれた。
　それゆえにこの何不自由ない暮らしの中で少女から大人の女へと成…続きを読む