疲弊した現代社会の片隅の、ほんの小さな温かさ

元医者のホームレスが、家なき子になってしまったローティーンの女の子とダンボールハウスで暮らし始めるお話です。
とても丁寧な文体で、するすると読み進めてしまいました。
ホームレスが医者を辞めるきっかけとなった事件は少々SF的ですが、近い将来実現しそうな設定なので、肝を冷やされます。
そしてそこまで科学が発展しても人間が考えることは変わらないであろうことも……
この作品でえがかれているのはいつの時代でも起こりうる普遍的な問い掛けのように思うのです。
確かに、少女のために万引きをする主人公のホームレスのおこないは、けして褒められたものではありません。
でも、誰が主人公やこの少女を救えるの? どうやって? ――と考えていくと、なかなか複雑なところで……。
しかしこのお話は創作作品です。今は主人公と少女の心暖まる交流を楽しんでもいいと思います。
願わくば二人がふたたび光の当たる世界で生きていけますことを……。