この作品を読んだ時、まず登場人物たちのクセの強さに驚き、次に群像劇としてのクオリティの高さに驚き、最後にその圧倒的なまでのエンタメ性に驚きました。
そう、面白いんですよ。この作品はただひたすらに面白い。
登場人物はみなどこかしら変なんですが、それでも(もしくはだからこそ)憎めない。それはきっと彼らのぶっ飛んだ個性だけでなく、行動から垣間見える芯の強さや、彼らなりの人生哲学を感じるからなのでしょう。
悲劇を喜劇にひっくり返すのは、いつだって『信念のあるバカ』の役目と決まってますから。
そんな『信念のあるバカ』が九人も出てくるこの群像劇コメディは、これ以上ない面白さのエンターテイメント作品だと断言できます。
しかもですね。その九人の内の一人はタイトルにもある通り『怪盗』なんですよ。
あ、いえ、すいません少し抜けていました。怪盗ではなく『怪盗紳士』でしたね。失敬。
怪盗紳士ランバーン。彼に盗めないものはありません。
そうですね。たとえば――やることなすこと上手くいかず、ため息が三日月を覆い隠してしまいそうな眠れない夜。そんな時は思い切って、怪盗紳士の活躍を覗いてみてはどうでしょうか。
きっとランバーンはあなたの憂鬱を、眠れぬ夜ごと盗み出してくれるでしょう。
怪盗に盗めないものはないのですから。
これ以上の娯楽作品を私はカクヨムで読んだ事が無い。それぐらい圧倒的に、恐ろしいほどに、面白すぎた。
文庫本で出たら買ってしまうレベルです。
言うまでもなくストーリーは絶品。
目まぐるしい群像劇や展開に押しつぶされてしまいます。ラストの演出も最高でした。
序盤に関して。主人公(いや、全員が主人公?)が出てくるまで少し時間がかかってしまいますが、そこは作者様の技量でカバーしてあります。
特筆すべき、グイグイと目を引っ張る『楽しい地の文』で。
“力技”なんて安い言葉に収まりません。まさに『読ませるブラックホール』です。
余計な話は推敲して削るのが主流な今日に置きまして、私は逆です。余計でくだらない話の中にこそ、キャラクターは生きていると感じられるからです。
大大大好きです。
構成力から地の文まで。全てが作者様の色に染まり、『凝縮された一滴の宇宙』
是非、皆様もご覧になって下さいませ。
そして作者様の次回作にとてもご期待しております。
酒と女とカジノの街にそびえる摩天楼を舞台に、ちょっと、いや、結構おかしい人々がてんでバラバラ好き勝手に、しっちゃかめっちゃか動き回りながらも一点に向かって駆け抜けていく、カオスかつシュールかつハイテンションなコメディ作品です。
色々と拾ってしまう天然受付嬢や、脚力おばけの受付嬢、思ったことをなんでも口にしてしまう社長秘書、泣き虫な財閥社長、怪盗逮捕に燃える捜査官、エリート然としたその部下、そして怪盗紳士。
こうした個性的な人物を怒涛の勢いでもって、しかも高頻度で視点を変えながら描きつつ、謎や伏線もばら撒いて、そして最後には綺麗に収束させているのは本当に見事ですし、気持ちがいいと思いました。
しかも面白い。ぐるぐる回って、すとーんと落っことされる。すごい。
是非とも、主要視点人物の出揃うchapter.08まで、まずはご一読してみてください。
ちょっと変な人たち(泣き虫社長とか、だだ漏れ秘書とか、ど脚力の受付嬢とか)がいっぱい出てきて、あっちに行ったりこっちに行ったりをタワーの中(外もある。外もちゃんと世界)で繰り広げて、でもそこには謎(!)とか仕掛け(!!)とかが散りばめられてあって、変な人だったはずの人たちにそれぞれの思い(切実なやつ)があって、だからこう動くんだ(行動原理。みんな自分のパートでいっぱい語ってくれる)というのがあって、それが集まって物語をすごい力(文章の圧力。押し潰されないように注意が必要)で押し進めていって、あれとかこれとかもあって、あぁ(驚愕)、えっ(うそやろ)、あぁ!(やってくれた)となる、要するに息継ぎする暇もないくらい、人が、タワーで、あれで、とにかくもう、読むだけで、自分も巻き込まれたみたいな気分(とても楽しいパニックの気分)になれるお話です。
32話まで読みました。ネタバレ極力ナシ。ふんわりと展開の雰囲気を匂わせるレベルのレビューなので、ほんの少しでも匂わされるのもイヤだと仰る方は回れ右下さい。
次から次へとめまぐるしく視点が変わりつつ、全体としては一つの舞台、すなわち巨大なカジノ街とその核たる財閥を巻き込んで引き起こされた事件を巡る、ドタバタサスペンスコメディ、という作品です。
まずはご挨拶とばかりに登場するキャラクターたちですが、まず皆が皆おしなべてひどい。狂人一歩手前か一歩手遅れといった感じの、ハイインパクトなヤバさを一斉に振りまいて、華々しくストーリーと事件の両方が幕を開けます。ただ、ヤバいと言いつつも彼ら一人一人はそれなりに必死で、それぞれに異なる動機を抱きながら、各々が好き勝手に行動した結果、盛大なカオスが顕現するに至ります。そんなカオスの真っ只中にありながら、至る所に機知と伏線が散りばめられていて、それらは中盤以降、ストーリーの回を経るごとに緻密なパズルのように組み上げられていく(多分僕が読んでるのはその最中)ので、もうとにかく奔流に弄ばれながら読み進めるしかない。とにかく、「騙されたと思って読んでくれ。読めば分かる」と声を大にして言いたいのです。
同系統の作品を挙げるなら、筒井康隆御大の『歌と饒舌の戦記』でしょうか。アレを楽しく読んだというお方ならピッタリだと思うんですが、そんな奇特な方とここで出くわすことがあるか。
ということで、話数的に僕が読んでいるのはまさに佳境でしょう。さて、どんな着地点が待っているのか、震えて待つことにしましょう。
ごめん群像二回言うた。
表題の通り、本作はハイテンションシュールギャグ群像タワーパニック怪盗小説で、ハイテンションシュールギャグ群像タワーパニック怪盗小説が何かって言うと、申し訳ないけれどそれはぼくにもわかりません。
でもハイテンションシュールギャグ群像タワーパニック怪盗小説(以下、怪小説)としか言いようがないんですよね。
「とりあえずおれが面白いと思うものを全部ぶっこんでみよう!」というアレをアレした結果、なんか物理学を無視した奇跡的なバランスでなんかがそびえ立ってる、みたいな感じです(ほめてる)。
読んでる感じ、読書というか映画を見てるような感覚ですね。
クエンティン・タランティーノの「パルプ・フィクション」をはじめて観たときの感覚に近いかもです。
「すげー面白いんだけど、じゃあどこが面白かったのかはうまく言語化できない」というか。
活字では本来割と忌避すべきとされる手法であるところの「視点保持者が目まぐるしく変わる」っていうところもパルプ・フィクションを思い起こす要素だと思います。
ただこの作品、電撃《新文芸》スタートアップコンテストにエントリーするうえであえてその手法を使っているというか、わざとやっているフシがありますし、それが面白さの一部でもあったりします。
新文芸としての実験的な手法と、軽妙でハイテンポなシュールギャグが売りのこの作品、続きを楽しみに待っています。
道を歩けば事件をひろう、天然受付嬢。
類いまれなる身体能力、おっさんキラー受付嬢。
見た目は大人、頭脳は子供、股間もメンツも潰されがちだぞ社長。
思った事は口にでる、情報セキュリティ的に大丈夫なのか秘書。
俺KAKKEEE15歳、レジスタンスリーダー。
可憐な横顔に少女の憂いを宿した、破壊力(物理)抜群の幼なじみ。
みんな違ってみんなアレ。
アレもコレもが「よーい、どん!」で作品世界を駆け回り、思わぬ角度から飛んでくるスナッピーなジャブ、ジャブ、ジャブ。
前作のグルーヴが幕ノ内選手だとしたら、今作は間柴選手。
振り下ろしの右に備えよ!
BGM: 「天国と地獄」