主人公のリディアは、受動的かつ被虐的な思考の下で動く傾向にあります。
気弱なわけではないのですけども、その生い立ち故か、酷いことをされても「自分がこうされるのは仕方のないこと」「自分が耐えれば他は丸く収まるからこれで良い」と考えがちです。
そしてストーリーラインも、彼女を酷い目に遭わせた人々へ復讐してすっきりハッピーエンド! ざまぁ達成! という流れではありません。
最終話まで見届けた今、結果的にそうなった、とも思いません。
あくまで私個人の特殊な感想でしかありませんが、この作品はそういった明快なものを期待して読むのではなく、リディアという一人の女性の生き方や、これから先の未来へ続く選択を見守る気持ちで読む物語なのかなと思いました。
恋愛(逆ハー&溺愛)要素、お仕事(学園モノ)要素、魔法を使った戦闘要素など、多数の属性が組み合わされており、またそれら一つ一つが緻密に練り込まれているため、どれか一つでも刺さる要素があれば最後まで読み進められるでしょう。
それだけの筆力とエネルギーがあります。
重厚なハイファンタジーを読みたい方におすすめです。
この物語のヒロイン、リディアは受動的な性格です。様々な問題が発生しますが、状況に流されがちで、昨今の流行りの逆境を跳ね除けるヒロインとは真逆な対応。
古臭い女性を貶めているような文化に囚われている所もあり、それが不快で読むのを止めてしまう方も多いかと思います。
でも、待って欲しい。
どうか、最後まで読み進めていただきたい。
そんなリディアの性質こそが、問題解決の鍵なのですから。
ヤラれっぱなしって、ムカつきますよね。やり返す方がスカッとしますよね。
自分で自分を守る。それが正義、と言うのは正しいでしょう。
けれど、耐え忍ぶのが悪かと言われたら、それは違う。
受動的なのも、辛抱強いのも、ただの性質であって良し悪しではない。
己の性質をどう扱うか。どんな性質にも良い面と悪い面が同時あり、どちらになるかは本人次第。
そんな当たり前な事を、この物語は思い出させてくれました。
造り込まれた世界観、本格派ファンタジー、癖の強いキャラクターも、この作品の魅力です。
少々長く、読み込むのに労力は要ります。
けれど、それを後悔させないだけの面白さがあります。
自信を持ってオススメ出来る作品です。どうかご一読ください。
※ただし、作中に虫系の魔獣が登場します。虫が苦手な方は無理はなさらぬよう、ご注意を。
くっ……。ひとこと紹介にもっと要素を詰めこみたかったのですが字数が💦
ともあれ、学び舎の体制がとんでもない中。
どこか天然なのに常識人で実力がある先生——それと癖の強い生徒たちの関係図がおもしろおかしいです。
相手を知らないところからはじまり、虚をつかれ、ほだされはじめているのに、かみ合ってない感がなんともいえません。
この女子。がんばって先生に徹しようとしていながら、生徒キラーのもよう。
重厚そうな影を匂わせながら、物語の紡ぎ手の感情に乗せ、軽快なテイストでユーモラスにまとめてゆく——
読み手に負担をかけない。こんな書き方もあるのだな……と。勉強させていただいております。
物語が始まった時、ヒロインであるリディアについて、情報はあまり明かされていません。
特級魔法師であるリディアは、世界で唯一、蘇生魔法が使える存在。
ある事件がきっかけとなり、大学の助教となり、それぞれに個性の強い、そしてどこか既定路線からはみ出し気味の学生達を指導することになります。
このリディアという女性が何者なのか?
少しずつ状況が明らかになっていくにつれ、この問いこそが、物語を解く大きな鍵になっていることに気づくでしょう。
過去を変える、物事を変える、何かを避ける、そう意図しながらも翻弄される登場人物達。
結局、今自分が、<この瞬間>にできる最善の選択を信頼して、運命を切り開いていくのだ、ということを教えてくれているような気がしました。
300話を超える、長い物語です。
にもかかわらず、この『リディアの魔法学講座』は、始まりの物語なのかもしれません。
同じく、リディアを主人公とした『図書館都市のリディア』という作品も公開されています。
緻密に作られた魔法世界、超リアルな人間模様、そして辛くても、困難にあっても自分を曲げないヒロイン、作者の創り上げた世界を楽しんでください!
第3章までのレビューです。
第2章大学授業編では、教師となった主人公が苦労します。
よくある教育問題などと重なる部分もあるため、そういった社会的な部分に関心のある人だとより楽しめると思います。
第3章は、主人公の生徒たちの活躍が目を引きます。
第3章まで読んでみると、この物語の面白さが分かると思います。
教育問題や学校の裏側のシビアな事情などは、興味ないという人もいるかもしれません。難しい話を読むのは辛いという人ももしかしたらいるかもです。
ですが、ある程度読み進めていくと、個性あるキャラクター達が活躍するこの物語の続きが気になってしょうがなくなるのではないでしょうか。
生徒達のキャラクターが魅力的で、その成長が丁寧に描かれているので、まず第3章までを一度読んでみてください。
世界で唯一の蘇生魔法の使い手としてエリート魔法師団に在籍しながら、とある任務で魔法を失い、魔法大学の講師に転職した少女リディア。
問題児が集められた特別授業を受け持つことになった彼女が、生意気な年上男子たちの指導に苦慮しながら魔法の真理へと迫っていくストーリーが興味深いです。
転職して痛感した大学教育の現場は世間の常識とかけ離れた理不尽とパワハラが横行する世界で、面倒な雑事はすべてリディア任せ、自分の研究や講演会を優先して、まったく生徒たちと向き合おうとしない教授たちに腹が立ちます。
そんな教授陣に失望していた生徒たちも、熱心に指導するリディアには次第に心を許していきます。
どんなに辛くとも投げ出さず、いつも自分を犠牲にして面倒事を引き受け、生徒の可能性を信じて見捨てない。まさに理想の教師ではないでしょうか。こんな先生に学びたかった。
けれどリディアに構ってほしくて無理に口説いたり、強引に迫ったりしては彼女を困らせる男子生徒たちが、つくづくバカだなぁと笑ってしまいます。
一見、よくある逆ハーレムですが、現実にもある大学教育の問題に切り込みつつ、世界観も作り込まれた本格派な異世界ファンタジーです。
(「学校へ行こう」4選/文=愛咲優詩)
魔法でファンタジーで主人公が愛されまくってる…という、私の趣味どストライクに投げ込まれた作品でした。
ところがどっこい、ただの逆ハーではないのですよ…!いいですか、皆さん…!
【ポイント1:世界観の作り込みが程よく深い】
特に、魔法に関する設定の作り込みが、素敵です。
過度に複雑でもなく、かといって、分かりやすすぎる訳でもなく。。
しかも、主人公リディアの講義という形で説明されるので、するっと理解できてしまうのです…なんなら、私がリディアの講義を受けたいくらい(ぇ
加えて、理路整然としてるんですよね。本当に、そういう教科書が存在しているかのような説明です…普通に納得してしまう己がいます…。。
【ポイント2:どのキャラも良い子!】
リディアもさることながら、各キャラ皆、それぞれに問題を抱えていて、乗り越えたい過去がある。これが、リディアとの関係性に良い塩梅で影を落としていて…胸がキュンキュンしますね…。
どのキャラにも深みがあるのですね…薄っぺらくないと言いますか。だからこそ、読者側にも想像の余地が与えられて、妄想がはかどります。
ちなみに、どのキャラも大好きな私ですが、推していきたいのはマーレン君です(傍若無人に見えて、めっちゃリディアのこと心配している姿がたまりません…)。
マーレン君だけでなく、素敵なキャラクター目白押しです!
貴方の好みの子もきっと見つかるはずですので、皆様、是非一度、お読み下さいませ~!
魔法の世界を舞台に、新入り大学教員が学生たちにモテまくる、逆ハーレム系ファンタジー……。なのですが、似たような作品の中で、頭一つ抜けています。
ハーレム系とか、逆ハーレム系の作品の多くで、欠乏しがちなのが、主人公の人間的な魅力だと思います。存在感が薄すぎたり、あるいは、なんでモテるのか到底理解できない、俗物だったりするパターンが多いように思います。
しかし、この物語の主人公、リディアは違います。彼女の一番の魅力は、まぶしいくらいの利他的な自己犠牲精神でしょう。リディアは一貫して、周囲の人を守るため、幸せにするために、自分の身をささげようとします。そしてその態度は当然、自分の受け持つ学生に対しても貫かれています。そんなリディアだからこそ、男子学生にモテるのも当たり前だと思えるし、読んでいて爽快感があります。
リディアは、大学の教員です。表向きはいつも、厳正かつ理知的です。一方で、心の奥底には、家族との関係など、致命的な弱さも抱えています。そのギャップが、ぐいぐいと小説を読ませる力を生み出しています。
リディアだけでなく、リディアの男子学生、ハーレムボーイズたちも、綺羅星のごとき魅力を放っています。
まず、十段階の笑みを使い分け、女を利用し尽くすホスト系男子、ケイ。抜群のトリックスターっぷりで、彼の出てくる場面は、アドレナリンが出すぎてやばいです。
堅物のキーファと、ワイルドなウィルのコンビは、バディ萌え不可避です。王族のマーレンも、いい味出てます。「邪魔だ庶民」などなど、彼のセリフには、いちいち笑ってしまいます。
そんな生き生きとした登場人物たちの魅力を、さらに際立たせているのが、物語の舞台です。とくに、五行相生思想を連想させる、重厚かつ緻密な魔法の設定は、圧巻です。
魔法の講義をしているだけのシーンがおもしろいなんて、なかなかないことでは?作中の魔法体系の壮大さは、本場アメリカの第一級ファンタジーに迫るものがあるでしょう。「この世界は、たぶんどこかにあるんだ」。そう思わせるような、完成度があります。
このように、超本格派のファンタジーなのかと思いきや、現代日本の大学教員のブログを読んでいるかのような、リアルな日常描写もみられます。私たちの生きる日常に近い世界と、限りなく幻想的な魔法の世界が入り混じるのは、まったく新鮮で、不思議な感覚です。Web発の小説でしか味わえないものなのかもしれません。
おもしろいだけでなく、物語の底流には、ジェンダー、エイジズムなど、読んでいると、ぐさぐさ刺さってくるようなテーマが流れており、作者の鋭い感性がうかがえます。
一点だけ残念なのが、名前が分かりにくいことです。地の文では名、呼びかけは姓なので、誰が誰なのか分からなくなってきます。地の文で、ところどころ、姓と名を併記すれば、もう少し分かりやすかったのかもしれません。
いずれにしても、読んでいると、狂おしいほどに物語の世界に行きたくなり、かつ、永遠に物語が終わってほしくないと思えるのは、至高のファンタジーの証ではないでしょうか。