七話 たくさんはしゃいだそのあとで

 オイナリサマが出て行ったあと、見てしまったそれを忘れるように思考を整理しいったん落ち着いた後、誰もいないことを確認して脱衣所に戻った。

 部屋に戻る間にも誰にも会わないようにとこそこそしていたが、誰にも会わなかったので意味なく終わった。

 何事もなく部屋の前まで戻れたので一安心し、夕食までゆっくりしていようと思っていたが、ドアを開けたとたんその考えは壊れていった。


「お、ぬしよ。これの着方がわからんのじゃが、どうすればいいんじゃ?」

「この服、尻尾を出す穴がないんだが、穴開けていいか?」


 そこには下着こそは着ているがほぼ半裸のスザクとゲンブがいた。


「あのぉ…?なんで俺の部屋に?」

「じゃから、これの着方がわからんって言っておるじゃろ。ビャッコは自分で考えろっていうし、オイナリとセイリュウはおらんかったし」

「それで半裸で俺の部屋にいるわけだな」

「別に水着姿見てるんだし、どうってことないだろう?」


 今さっきオイナリサマの全裸を見てしまったので今更なのだが…。

 そんな風に内心で苦笑した。


「全くあと三日ここでその浴衣着るっていうのに、しかも三日目は浴衣を着るがメインのイベントがあるんだから、浴衣の着方は知っておいたほうがいいぞ」


 そんなこんなで園長の浴衣レッスンが始まったのである。




   #




 数分後…


「おぉーこれでいいんじゃな!」

「尻尾出せないの少しきついな…まぁいいか」


 かなり時間がかかったが、かなり丁寧に教えたので相手に触れずに着替えさせることができた。

 その終わったちょうど電話が鳴った。


「お客様。お食事の用意ができましたので、一階の食堂にお越しください」


 とのことなのでちょうど一緒にいた二人と一緒に行くことにした。



 食堂に向かうとビャッコが一人で座って待っていた。


「なんだビャッコ、来るの早いな」

「特にすることなかったからな、お前たちも三人そろって何してたんだ?」

「浴衣着させてただけだよ、それにしてもオイナリサマとセイリュウは?」

「なんか一階の娯楽室で二人で行ってるみたいだよ、何遊んでるんだか」


 なんで二人が一緒なのか多少理由を知ってるので苦笑いするしかなかった。


「しっかし浴衣の着せ方教えてるってことは、まぁそういうことだよね?」

「づいうことってどういうことだよ…」

「ふーん、面白そうだったし私もしらないって言うていで行けばよかったかな」

「面倒くさいからそれはやめてくれ…」


 ニヒヒと笑うビャッコにため息をつくしかなかった。


「噂をすればなんとやらだな、オイナリと…セイリュウ?なんかすごくしおれてい居るが」

「あ、皆さんお待たせしました。セイリュウさんと娯楽室で遊んでいたら遅くなりました」

「ま、待たせたわね。さぁ楽しい食事の時間にしましょう…」

「あー、大丈夫か?なんとなく何があったかわかるけど」


 セイリュウがしでかしたことに自分も知ってるので同情も無い。

 そんなことを話をしてる間に料理が出そろっていた。


「おぉー!これはおいしそうじゃな!この黄色いのなんて初めて見た!」

「すごく豪華な夕食だな、オイナリのとは大違いだ」

「そんなこと言うなら次から作りませんよ?といってもこれはさすがにまねできないですね…」


 それそれが各々に感想を口々に言う。

 それを見たおかみさんが自分話しかけてきた。


「うれしいねぇこんな風にほめてもらえるなんて。こんなの久しぶりだねぇ」

「そうなんですか?紹介サイトには料理と景色が評判がいいって聞いたんですけど…」

「うん、料理には自信あるんだけど純粋においしいってほめてくれるのは久しぶりなのよねぇ~」

「まぁこいつらは子供っぽいところがありますから…」

「それでもうれしいよぉ~最後のお客さんがあなたたちでよかったわ」

「ん?最後のお客さん?」


 ”最後の“という言葉に気付き聞き返す。


「実はこのホテル新しいホテルになるのよ。それでほかの方の予約はキャンセルになって、それであなたたちが最後のお客さんってわけ」

「そうなんですか、なんというかありがとうございます」

「いいのいいの、私だって楽しんでるのを見るとうれしいんだから」


「これビャッコ!わしの残しておいたのなんで勝手に食うんじゃ!」

「ん、いらないから残してたのかと思ってた。オイナリからもらえば?」

「ちょっと、なんで私のなんですか!それならセイリュウさんのをあげますよ」

「え、えぇそういうことならいいわよ…?」


「さすがにうるさすぎですよね…すいません…」

「あはは…こんなに子供っぽいのも久々に見たわ…それにしてもあなたのお連れさん、神様の名前で呼び合ってるのね」

「あぁーその、ネットで知り合ったって感じなので…この五人は本名じゃないんです」

「まぁそうよね、こんな宿に神様が来たらひっくりかえっちゃうし、そもそもそんなことないわよね!」

「そ、そうですよね、あははははは…」


 隣の席に座ってる女性たちがもともとは神様の象徴からなったアニマルガールということは、口が裂けても言えない園長なのであった。




   #




 その後、食事を終えた一行は各々部屋に戻ることになった。

 自分はセイリュウに少しだけ叱りを入れておいてから部屋に戻った。

 部屋に戻るとベッドの上に紙切れが乗っていて、そこにはビャッコからのメモが書いてあった。それは後で確認するとして。


(今日は移動と海と温泉でのアクシデントで予想以上に疲れたな…)


 ベッドに寝転がるとそれまた予想以上の睡魔が襲ってきた。

 そのまま睡魔のままに眠ったのだった…。







 次回「海より食い物!?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

神様だって○○したい!! 七尾狐 @nanao1068

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ