闘いの始まりも、終わりも、全ては必然の名の下に

本作で目を見張るもの、それは、圧倒的な必然性ではないかと感じました。
何故今、この地に、この人物が転生し、どうしてこの闘いが起き、この結果になったのか。読み進めるうちに、それら全てに納得がいく。
読み易いのに、迷いのない文章で、その答えへと導いてくれる展開は、まさに、主人公の一貫した信念そのもののように思いました。

そして、もう一つ感心したのが、本作に登場する全ての人物に何かしらの意味があること。
敵も味方も関係なく、この者と敵対したから得たものがあり、この人と関われたことにより変われたものがある。
一人として無駄な出会いがないのです。

さらには、敵でさえ、絶対悪とは言えず、悪となってしまった背景に、ともすれば共感してしまいそうな自分を、主人公が曲がらない主張で対峙していく姿には、人として惹きつけられるものがあります。

一つ、読めない点をあげるなら、笑いの要素。そこそこシリアスなシーンで唐突に笑わせてくれる。何故ここで? と突っ込まずにはいられないのに笑ってしまう。
でも実は、その内容が後の重要場面への布石だったりするのです。
それが分かった時には、もうお見事としか言いようがありません。

作者視点で見れば、非常に綿密なプロットを作り上げてからの執筆だったのだろうと感心しきりです。

ですが、一人の読者としては、あっという間にこの世界に入り込み、主人公たちと一緒に笑って、泣いて、成長していくような感覚を味わうことができます。
非常に面白く、得るものの多い作品だと思いました。

『そうなるべくして、そうなった』主人公たちの必然性に彩られた人生の一部を、共に追体験してみてはいかがでしょうか。

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