ブラッド・バレット・バーサス!―Chevalier―【完結済み】

四ツ谷

プロローグ 出会い

プロローグ 0 終わりと始まりは表裏一体

「……なんじゃ……真っ赤まっかじゃのう……」


 てつくようなその夜。

 割れた窓から厳冬げんとうの風が、頬を突き刺す。


 数時間前までは、彩りよく飾り付けられていたこの事務所が――

 今は『この世の終わり』と言わんばかりに、荒れ果てしまった。

 壁には無数の弾痕きずあとすすが刻まれ、焼けた人肉の臭いが鼻をつく。


 そして――そこにワシは……たった一人、倒れていた。


「……いや、真っ赤なのは……ワシか……」

 零れていく自分のいのちが、床を赤く赤く、染めていく。


「そうか……ワシは――死ぬんか……」

 そんな当たり前のようなことを、ようやく自覚する。呼吸が浅くなる。


 自覚した途端に、かすれる意識と視界と共に、この激しい痛みが、だんだんとぼやけていく。けるようだった体が、流れるいのちと一緒に、急激にその熱を失わせていく。


――もう、終わりは近い。


「情けない……最後じゃのう……、結局ワシは……最後の最後……まで……」


 辺りには無数の死体したい――無数の成果――無数の罪。


「ひ……とり……ぼっち……か……」


 そんなものだけを最後に残して、ワシは――【神楽木 龍之介かぐらぎ りゅうのすけ】の十九年の人生は――終わった。

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