契約しちまった2
「あんたは呼ばれたんだ。コンビニに」
「ん?」
「だから、コンビニに呼ばれたわけよ」
「新手のナンパか?」
「馬鹿か! あんたにはこれっぽっちも興味ないわ!」
女は人差し指と親指で丸を作る。長い指の先は、これっぽっちどころか引っ付いていて、ゼロだと言いたいらしい。
「まあ、説明するのがあたしの仕事だし。とにかく聞いて」
「いや、俺は弁当買って帰る」
「ここには求人雑誌も弁当もないよ」
「だって、ここはコンビニ……」
待てよ。
俺がいつ、仕事を探してるって言った? まだ何も言ってない。言うつもりだってなかった。
「ここに来る9割は仕事をしていない。就活中、辞めたばかり、やる気なしってな具合よ。あんたはどれかわからないけれど、共通点がある。いますぐに金が必要。金銭的に困ってる。違うかい?」
確かにそうだ。車を買ってしまったこともある。
今、思い出したがこの間海外旅行にいってしまった。散財した。ボーナスは全て流れた。車を買っている場合じゃなかったんだよ。
問題はそこじゃない。この女、なぜそこまで知っているんだ。
「危険だけど手っ取り早く稼げる仕事があるんだ。やらないかい?」
「仕事?」
「内容にもよるけど、1時間で車1台分稼げることもある。上手くいけば、家だって買える」
危険な匂いがぷんぷんするぞ。絶対に聞き返してはいけない所だ。黙って帰ろう。
何だ、今日は。疲れてるのか? どっちかというと、何かに憑かれてるな。
「あんたは初心者だし、とにかくそこでガチャって、雑魚退治をよろしくね」
「は?」
それまで黙っていたヤンキーが、帰ろうとした俺を背後から羽交い締めにして、もう1人は財布を抜き取る。
何だ! この堂々としたカツアゲは!!
「姐さん、ちょうどある」
「んじゃ、契約成立ね」
「……はぁ!?」
契約成立!? ちょっと待てよ。契約っつーのは書類が必要じゃねえのか! その前に、俺は何の契約をしたんだよ!!
「登録料の2千円。ガチャ3千円。ちょうどいただきます」
「ちょっと待てぇぇぇぇ!!」
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