ガチャっとクエスト
和瀬きの
辞めちまった
*
仕事を辞めた。辞めてしまった。
38歳だぞ。今辞めて、大丈夫なのか? いや、駄目に決まってんだろう!
これで犯罪でもやってみろ!
報道番組なんかで顔まで公開されて、無職の奴はどうしようもねえな……なんて言われるに決まってる。
つまり、あれだ。緊急事態なんだよ!!
財布の中を確認してみる。5千円。
まだ何とかなる。銀行にはこれまで貯めた金がある。
次に出てきたのは車の免許証。
あ、やべえ。この間、新車買っちまった。ローンが始まる。生きていけるわけない!
仕事。とにかく仕事!!
コンビニにでも行って、求人の無料雑誌でも持っていくか。
俺は駅前のコンビニに入ろうと足を向けるが、午後5時という賑わう通りに躊躇してしまう。
俺の見た目はまだ働く男だ。しかしだ、この賑わうコンビニに入って求人雑誌を手に取る勇気はない。
アルバイトの大学生にも、学校帰りの高校生にも、つまみを買いに来た社会人にも、家路を急ぐ主婦にも馬鹿にされながら、そいつを手に取る。
出来るわけないだろ!!
いやいや、どんだけプライドが高いんだよ。
俺は無職だ。認めるんだ。俺は底辺に落ちたんだ。
待てよ。あんな会社に人生捧げる方がどうかしている。ブラックだろ。きっとブラックだったんだ。
これは転機だ。これから、ホワイトな場所で己の力を発揮するんだ!
「とにかく、あれだ。別のコンビニに行こう」
賑わうコンビニに入る勇気は、やはりなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます