契約しちまった1


   *


 自宅近くのコンビニはいつの間にか閉店。なんという不運。独身の俺に必要な店が消えちまってる。


 家賃安くしろって大家に言いたいが、黙っておこう。この間、ゴミ出しのことで揉めたからな。


 1日間違えただけじゃねえか。


 いや、そんなことはどうでもいい。コンビニは一体どこにあるんだ。

 駅前のやつは行きたくないし、あまり客がいないところも気まずいな。



「マジかよ! ツイてねえな」

「稼げるエリア引いたのによ。相性悪い武器持っててさ」



 待てよ。あのヤンキーたちが持ってる袋はコンビニ!


 あっちは住宅地だけどコンビニあったのか。仕方ない、時間もあるし探してみるか。


 しかし妙な会話だったな。あれか。最近、流行っているスマホのゲームとやらか?


 お前ら、そんなことしてないで勉強しろ。資格持っていたって、俺みたいなことになる世の中だぞ。


 いや……。

 仕事を辞めたのは俺の責任だよな。


 頭ではわかってるんだ。イライラしてやっちまったんだ。認めろ。いや、認めたくねえ。


 俺は真面目にやってきたんだ。


 そうこうしているうちに、明かりが見えてきた。本当にコンビニがあった。しかも自宅からわりと近い。


 知らなかったな。こんな場所にコンビニがあるなんて。

 しかし、聞いたことがない店名だ。読めないぞ。どこの国の言葉だよ。


 とりあえず、求人雑誌と夕飯だな。何か弁当が残っていれば助かるんだけどな。


 俺はゆっくりと店の前に向かう。

 自動ドアが俺を招き、続いて目に入ったのはヤンキーだった。


 治安が悪い場所なのか?



「珍しい客人ねぇ」



 20代半ばといった感じの女が俺を見る。

 珍しいだと?

 そんなにこのコンビニは客がいないのか。ということは、すぐにでも潰れるな。


 飯を買って帰ろう。

 今日はあまりにもツイてない。こんな日に就職のことなんて考えるべきじゃない。

 明日にしよう、明日だ!



「ねえ、お客さん」



 レジに立つ女がやけに馴れ馴れしく話しかけてくる。

 巨乳だ。それもキャミソールなんか着やがって、見せる気満々じゃないか。けしからん。


 美女ではあるな。だからって……だからって、そういう服は……まあ、似合っているけど。



「あなた、初めてでしょ?」

「は?」

「だ・か・ら、初めてなんでしょ?」



 色気たっぷりの声で、俺に質問してくる女。

 妖艶な笑みで俺を誘っているらしいが、意味がわからない。



「コンビニには毎日通ってる」

「はい?」

「だから、コンビニは……」

「なにを勘違いしてるの」



 店内にいた全員に睨まれた。

 彼女以外にコンビニにいたヤンキー2人が、最高の睨みで俺を脅してくる。


 お前ら、絶対彼女に恋してるだろう。



「買って帰るだけだ」

「だから、帰られちゃ困るわけよ」



 この女、俺を帰さないつもりか?

 なんて大胆な誘い方なんだ。ついにモテ期到来といったところか。


 長い髪の毛を弄びながら、赤いリップの唇を動かす。セクシーだな。

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