エピローグ

エピローグ

 何だかとても気持ちがいい。ここはどこなんだろう? ボクは何をしていたっけ?


 遠くで聞こえる夢ヶ咲さんの声で、薄く目をあける。

 ボンヤリとかすむ視界の中に、夢ヶ咲さんの整った顔が浮かぶ。


 肩より長い、ゆるいウエーブのかかった髪を指先で耳にかけ、小首をかしげてニッコリと笑う夢ヶ咲さん。


「あーーーーーーっ!!」


 ボクは目をむいて飛び起きる。そして、転がるようにその場を離れ、夢ヶ咲さんを指さし、コイのように口をパクパクさせた。

 夢ヶ咲さんはキョトンとして首をかしげる。


 夢ヶ咲さんだ! 間違いない!

 ボクが夢で見た『夢恋の君』は、夢ヶ咲さんだったんだ!!


 どうしよう? どうするの? 何でよりによって、夢ヶ咲さんなのさ?

 夢ヶ咲さんのことが好き?

 いやいや、何かの間違いだ! 夢だ、夢! あっ、真弓の夢の中か……

 キレイなんだよ? キレイだし、いい子だし、尊敬もしているんだけど……

 何だろう?

 この、嬉しいような、悲しいような、悔しいような、複雑な気持ちは?


 あれ? ボク、泣いている? ああ、そうだよ。泣いているともさ。


 夢ヶ咲さんは心配そうな顔でボクに近づく。

 引けた腰で、ジリジリと後ずさるボク。複雑な感情に対応しきれないボクの顔が、ピクピクと小刻みに引きつる。

 そんなボクを察したほかの三人は、ニヤニヤしながら遠巻きに眺めていた。


 だって……だって……我慢しなくてもいいよね?

 もう言っちゃってもいいよね?


「わぁ~ん! 悪夢だ~! ボクの初恋を返せ~! 誰かこの悪夢を祓ってくれぇ~!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪夢祓い倶楽部☆タイマーズ えーきち @rockers_eikichi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ