第10話 快晴
前来たときとは、比べものにならないほど、人が集まっていた。
煩雑にではなく、整列しており、俺は少なからず安堵した。
「間に合ったみたいだな」
そう声をかけ、横目で雨宮の様子を伺うと、目を見開き、驚いていた。
「何で間に合ったの?」
「ああ、スケジュールの前後は良くあることだろ?」
雨宮は目を細め、頬を膨らませた。
俺は苦笑いするや否や、見知った人が現れた。
「ありがとな、助かった」
「気にすんな、それより良かったな間に合って」
親友と言うにふさわしいのは彼だろう。
佐々木だ。
本当に頼りになる。
雨宮を探しに行く前に、実行委員のプリントを渡し、そして、参加する人たちの整列を頼んだのだ。さらに、俺が遅れたときには、アンコールで先生方にアドリブで何かするように頼んでくれ、と言ったのだ。
「借りはいつか返すさ」
「ああ」
「ありがとう」
雨宮の発言に佐々木は、驚きを隠せていなかったが、笑みを浮かべ、去って行った。
先生方のアドリブ演奏が終わりを迎え、高松先輩が司会になり、いよいよ、始まった。
徐々に扉の前に近づき、順番が来るのを待つ。そして、最前列になると、雨宮の方を向き笑みを浮かべると、雨宮も返してくれた。
一歩、また一歩と、体育館にひかれた絨毯を踏みしめ、進んでいった。
ちなみに、我がクラスのTシャツは、今の雨宮を引き立てる、色使い、デザインだった。その美しさは俺では形容できるはずがない。色のなかった少女が、今、鮮やかに満面の笑みを見せるのだ。
先輩のナレーションとともに、どこか恥ずかしいような素振りを見せる彼女に大きな声援が贈られた。
俺はこの思い出を決して忘れないと心に刻むように強く強く誓った。
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