第7話そして、歴史は作られる
本物と偽物。
真作と贋作。
本物と寸分たがわなければ、その違いは一体なんだというのだろうか。
――おそらくそれは、自らを本物だとする認識しかない。
どちらかが、自分は本物だと主張してくれなければ、そもそも本物か偽物かの議論にすらならない。
そう言う意味で、
何しろ、昨日から一度として話していない。
外見はいわゆる武装した埴輪像。
腰には直剣を帯びており、頭から兜をかぶっているので顔もよく見えない。
しかし、剣の反対には馬のマスコットのような埴輪をつけ、首には勾玉をはめていることから、彼女なりの小さな主張なのかもしれない。
前後左右から見ても、全く同じに見えてしまう。
しかも、顔を覗き込んでも嫌な顔一つしなかった。
「こちょこちょしてみる? でも、反応ないんだよ。胸もんでもダメだったんだよ。鎧きてるからかな? でも、
「驚かせてみても驚かないし。攻撃ははじかれるし。落とし穴作って落としたら、三日ほど行方不明になってたし」
いつの間にか、
――ていうか、お前ら何気にひどくない?
でも、外的刺激に対して無反応だと対応に困る。
「なあ、誰か。
この場にいる全員を見回しても、その答えは得られなかった。誰もが、お互いの顔を見回している。
おそらく、他の
思考の停滞が静寂を呼び、静寂が食堂を支配していた。
「もう、こんなことは無しでおじゃる!」
勢いよく扉が開け広げられ、その場の空気を一掃する声と共に、
「もう、マロのような悲劇はなくすと誓うでおじゃる!」
涙を浮かべた必死な
――いや、誓うも何も……。僕が仕組んだわけじゃ……。
思わずそう言いそうになったけど、その目を見てるとそうは言えなかった。
短くても、心は通じ合ったんだ……。平安時代。色々と問題はあるけど、恋多き時代だったのだろう。
「そうだね。それには君たちの力が必要だ。協力してくれ、
真剣に見つめたその目の奥には、真摯に受け止めようと思う僕がいた。
「わかったでおじゃる。
つかつかと一方の
――しかし、
「おかしいでおじゃる。こっちのこれを、こうでおじゃる」
「いや! もう――」
もはや、
――逆鱗に触れるという言葉。まさに、それがふさわしい。
憤怒の表情を見せたかと思いきや、
食堂の天井を突き破り、どんどん大きくなっていく。
「にげろ!」
勝ち誇っている
「あはは!
「
「ふふん。マロは何でも知ってるでおじゃる」
「いいから、にげろ!」
両脇を走る
――本当に、間一髪だった。
僕らが飛び出した瞬間、屋敷は一気に崩れていた。
いや、僕が安全に逃げれるように、
「ありがとう、みんな」
崩れ落ちた屋敷を振り返ると、その中でただ一人、巨大化した
「ところで、
「すぐに戻るでおじゃる。落とし穴にはまった時に、お腹がすいたので馬を引っ張ったでおじゃる。一度ああなると、寝てるでおじゃる」
――ああ、なるほどね。
「だれか、
指さす先にいた
「明日を得る。そのためには覚悟がいるぜよ。おまんのその覚悟、見せてもらったぜよ」
なんだかよくわからないが、やけに納得した
――頷き、何かを納得する二人。
「じゃあ、そっちが偽物で。これで全員見破ったことになるけど、あの
確かに終わったと思う。でも、それを宣言せずに、
「それより、本物の
「いないし。きっと、まだ寝ぼけてるし」
「そうでおじゃるな。冬眠中でおじゃった」
「何を悠長に! ていうか、お前らも
その時、駆け出した先にある瓦礫の中、そこにある冷蔵庫のような箱の中から、一人の少女が這い出してきた。
「うーん。よく寝たでござる」
寝癖の付いた頭を左右に揺らし、伸びをしながらその少女はあたりを見回していた。
「あれ? ここはどこでござる? まるで廃墟でござるな」
「あはは!
「タイム魔神攻めてきて大変だったし、後片付け手伝うし」
「なんと! 拙者、気付かずに寝てたでござるか? 不覚でござるよ」
「
駆け寄り、それぞれ手を差し伸べる三人の
――とりあえず、終わった。タイム魔神の脅威はさり、一年という時間を勝ち取った。
犠牲は大きかったけど、
建物は壊れても、彼女たちが無事ならそれでいい。
「さあ、管理人殿。掛け声を頼むぜよ。新しい我が家を探しに行くぜよ!」
言ってる内容はともかくとして、その姿は頼もしかった。
「そうだね。じゃあ、とりあえず局長室を占拠するか!」
僕のあげた提案に、
壊れても、やり直す。そうして、歴史は繰り返す。
和史擬人伝・撚! あきのななぐさ @akinonanagusa
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