第6話目的が同じなら、その一点で理解は……。

それは一体どういう事だろう。

『相手が本物、本物はうそをつかない』ということは、自分は偽物。偽物はうそを言うという意味なのだろうか?

そうすれば、そもそも相手が偽物になる。

だとすると、偽物が二人?

いや、まてよ……。偽物はうそを言うと決まっていない。偽物が言っていることが本当だとすると、ちゃんと筋は通っている。


でも、わざわざ自分が偽物だというのか?

昭和しょうわと違って、理知的な目をしている明治めいじが、その場のノリのようなもので自分を偽物というだろうか?


いや、あの目はそんな感じじゃない。何か自分の信念を貫くような、そんな気概にあふれた目だ。


――わからない。いったい何をよりどころに考えればいいんだ?


思考の迷路にはまってしまい、何がなんだかさっぱりわからなくなった頃、それらを吹き飛ばすような快活な笑い声に包み込まれていた。


「そんなに考えなくてもいいぜよ。ワシが本物ぜよ。この人が言うとおりぜよ」

示された方の明治めいじが、堂々と自らを本物と名乗っていた。


「どういうこと? それでいいの? ていうか消えないのはなぜだ?」

これまでは、偽物を指摘すると消えていた。でも、今回はそうなっていない。


――そうか。偽物と指摘してないからか……。


「おんしの思う通りぜよ。だから、そいを言うのは待つぜよ」

まるで僕の思考を読んだかのように、偽物の明治めいじが頷いていた。


「でも、そうだとしても……。理由は?」

これまでで、分身には個性があるのは分かっていた。消えるときの表情も仕草も様々だった。


「説得されたぜよ。無血開城ぜよ。おまんが最後の難関を成し遂げるか見届けるぜよ」


顎をしゃくるように示した先。

そこには、完全無表情の古墳こふんたちが並んでいた。

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