あるいは酒でいっぱいの神

「え、女子大生好きでしょ? おじさんは好きだよ」

 劇中に出てくるこの台詞が、この小説の全てであると言っても過言ではない。

 おそらく作者は、女子大生が好きだ。
 それと同じくらい、日本酒が好きだ。

 ならば――その二つを一つにしてしまえばいい。

 その発想が生まれた時点で、既にこの小説は“勝っている”。

 ────上代先輩は日本酒になった。

 まるで文章自動生成プログラムが手当たり次第に文章記号を順列組み合わせした結果出力されたような冒頭の一文が、まさに字義通りの意味であることに読者は徐々に気づかされることになるだろう。

 その一文から紡がれる物語は、「女子大生」という記号が我々に喚起させるフェティシズムと、人類のアルコールに対する希求とが絶妙に混ざり合って、一種独特なエロティシズムを生み出す。

 それは究極のフェティシズムか――あるいは酩酊の生み出す幻覚か?

 上代先輩とは酒である以前に人間であり、
 また人間である以前に――酒なのである。

 果たしてこの感情(リビドー)が求めるものは酒か、それとも上代先輩か。
それすらも曖昧な宙づり状態のまま、読者は不思議な酩酊感を彷徨うことになる。

 まずは飲み――そして酔われよ。私は十分酔わされた。

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