Hello、Hello、こちら。
―僕は絶対ユウを離さない。
シュウが言う台詞は大体いつも大げさで、私は嫌でも覚えてしまう。
告白のときなんか「誰にも殺させない」なんて。
まぁ、思春期の戯言に付き合ってくれた感じはあるけどね。
あの時は、シュウが世界のすべてだった。
いや、むしろ。家にも学校にも居場所がない私を救い出してくれたシュウが、私の世界だった。
今でもそれは変わらないのだけど、それはもっと穏やかな感情で。
ねぇ、貴方がいなきゃ生きていけない、なんて私が口走ると自分でも思わなかったの。
大げさなくせに優柔不断で、優しいくせに意地っ張り。
シュウはとても男の子らしい男の子で。
私はとても女の子だった、と思う。
だから、だからね、シュウ。
私はずっとユウのままなの。
死ぬならこんな日がいい、なんてことを話した気がする。
満天の星空が綺麗な日で、私がシュウにこう言った日。
「シュウが、殺して」
シュウは一度だって私に嘘をつかなかった。
今でも私はシュウに殺されたままだし、シュウは私を離してくれない。
ねぇ、どうするの。
私、もう大人になっちゃった。
オリオン座を追いかけるさそり座みたいに。
ずっと届かないところにいるのに。
ぐるぐるぐるぐる、回ってるの。
ねぇ、シュウ。
ジューンブライドなんてどうでもいいから、八月には帰ってきてね。
それとね、私相変わらず視力はいいから。
でも八月は煙が目に染みて、うまく見えないかもしれないの。
だからね、シュウ。
六等星じゃ、足りないから。
もっと、
―もっとちゃんとあたしのところに来なさい、ばか。
なんで置いていくくせに離してくれないの。
あたし、死にたいくらい苦しいよ。
なんで殺しちゃったの、もう死ねないじゃんか、ばか。
シュウのばか。
愛してるなんて、絶対言わない。
―これ以上泣いたら、ほんとに死んじゃうでしょ。
ハロー、グッバイ。世界よ、おやすみ。
君がいないこの星は酷く寒くて悲しいよ。
ハロー、グッバイ。世界よ、おやすみ。
あの子の笑顔を届けておくれ。
私の目を貫いても構わないから。
Hello、Hello、こちら。
Hello、Hello、こちら、私。
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