Hello、Hello、こちら。
あ、あー。聴こえる?
…ん、ノイズが激しいな。磁場が悪いみたいだ。
まぁいいや、少しこのまま聴いててくれよ。
そっちの様子はどうだい?
何が起きたのか僕にもよくわからないんだけど、突然電波を拾っちゃったみたいなんだ。この星では身体だけでも電波を拾って通信できるのかな?初めて来たからわからないや。
そう、…だからこれがどこに届いてるかもわからないんだ、この星の中なのか、それとももっと遠くの星なのか。
本当は君にだけ聴かせたかったんだけど、まぁ仕方ないね。宇宙に放り投げておけば、きっと誰か見つけてくれるさ。
うーん…
何から話そう?色々言いたいことはあるんだけど。
あ、そうそう。そっちはもう春は終わったかな。
春かぁ。懐かしいな、ここしばらく太陽も見てないや。
この星は夜しかないみたい。すごく寒いし真っ暗なんだ。あぁ、でも真っ暗ってことはないか。星がすごく綺麗なんだよ。僕が昔見てた星よりずっと大きくて、まるで燃えてるみたいに明るいものだってあるんだ。
星って案外岩みたいな形してるんだね。でもギラギラ光っててかっこいいよねー、って、そこからじゃ見えないよね。
あ、この星はなんて名前だったかな。
忘れちゃった。でも君のところから見たら見えてるかな。大三角だっけ、…あぁ、さそり座か。思い出した。
……星の名前じゃないって?だから忘れたってば。もう、僕あんまり記憶力良くないの知ってるでしょ。
さそり座はオリオン座を追いかけるんだったよね、確か。さそりに刺されて死んじゃうなんて、誰も考えてなかっただろうけど。
でもさ、僕は思うんだ。
オリオンはきっと寂しかったんだなって。
地上で自分だけが1番強い、なんてさ。誰もいないところで空威張りしたって苦しいだけだと思うんだ。ちやほやされるのと好かれるのは違うから、きっとオリオンは誰にも好かれたことがないんだろうな、とか。
威張り散らして、暴力を振るって、それしかやり方がわからなかったんだろうな。
だって冬のオリオン座、すごく綺麗だよ。
誰かに見て欲しかったんだと思うんだ。
もしも僕が星になったら、どんな星座になるのかな。君が星なら、きっと綺麗だ。
僕が星なら君にだけ見つかるように、六等星でいるよ。
君は目がいいから、きっと探せるでしょ。
あぁ、ノイズが酷くなってきた。
何だか怖いよ、この音。僕あんまりホラーとか好きじゃないんだけど…なんか、泣き声みたいに聴こえる。
ザラザラしてるから、きっと気のせいなんだけどさ。
あと何を話そうかな。
あぁ、そうだ。君のウエディングドレス、早く決めないとね。きっと何を着ても似合うけど…気の強い君のことだから、きっと決めるのも一苦労だよ。あんまり怒らないでね、全部似合う、は何もめんどくさいからって訳じゃないんだから。本心なんだよ。
ジューンブライドには間に合いそうもないけど、君の誕生日には帰ろうかな。八月下旬でしょ、大丈夫。余裕だよ。
気が強くて、意地っ張りで、誰より寂しがり屋な困った君が大好きだから。
……電波だからって好き勝手に言いすぎたな、やばいやばい。無礼講ね。ごめんね。
ん、……だめだ、よく通らなくなってる。
僕の声も聴こえなくなってきた、あ、駄目だ、なにも聴こえない ノイズばっかりだ ザリザリ いってるな これは ちょっと
あ ぁ もうき れ そうだな
待って、 も こし け いいた ない こと
___ねぇ、泣かないでよ。
君を誰より愛してるから。
ハロー、グッバイ。世界よ、おやすみ。
君がいないこの星は酷く寒くて悲しいよ。
ハロー、グッバイ。世界よ、おやすみ。
あの子の叫びを届けてくれ。
僕の耳を切り裂いても構わないから。
Hello、Hello、こちら。
Hello、Hello、こちら、僕だよ
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