エピローグ
3月1日、日曜日。今日はアカネとのデートの日だ。二人で漫画喫茶に行き、カップルシートでDVD鑑賞する。派手なアクションが人気を呼び、おととし公開されて話題になったハリウッドムービーだ。息を飲む映像の連続に僕もアカネも夢中になった。
透視デバイスで彼を監視するのも今日が最後。一応、宇宙警察が彼の身の回りを今後も警戒してくれることになっているが、私が彼を見守ることができるのは今日が最後なのだ。
ナナは彼に最後のメッセージを送ることにした。昨日、眠りについた聡吾の寝顔を見ながら、透過性のチップを彼の脳に埋め込んだ。一回メッセージが送られると消えてしまう、一時的に用いられるチップだ。
メッセージを送信できる機器に向かってナナは言葉を送った。最後の言葉を聡吾に贈った。
「あなたは優しいから、彼女のこともきっと幸せにできる。あなたに聖書はいらないよ。あなたの優しさがあなたの力になる」
DVDを観ていた僕に届いたその言葉は、統合失調症の幻聴で聞こえた言葉かと思った。しかし、その声は優しく懐かしく僕の心に響いた。なぜだか、僕はこの言葉を胸にしてこれからも生きていく気がした。恋人と友人と家族がいるこの地球でこれからも生きていく、そう、生きていくのだと悟った。
星に帰る? ~一年間のお試しファンタジー~ 遊道よーよー @yoyo0616
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