第2話「同棲」
僕は橘真美に起こされると、そのまま食卓に案内された。
テーブルには、「ザ・日本の朝食」と言ったメニューが並ぶ。ごはん、味噌汁、焼き鮭・卵焼きか、なかなかおいしそうである。まぁおいしそうといったって、鮭焼いて、卵焼き作るくらい僕でもできるだろうが……。
「で、要は僕の両親の留守の間の家事をするバイトをすることになったとそういうわけかい?」
僕と橘真美は二人で食卓で向かい合っている。
「そうそう、隆司君はしらないかもしれないけど小浮気君のお母さんとうちのお母さん仲がよくってね。それでなんかこんな話になったのよ」
そうか、まったく知らなかった。まぁでもこの子自体は見たことがある、たぶん隣のマンションだし、学校も一緒だろう。何度か学校で見たような気がする。入学当初は結構話題になったような子だったはず。
なぜか最近はとんと話を聞かなくなったが……。
「それにしても僕に断りもなく、年頃の女の子を家に入れるとか、何考えてんだ、うちのババアは?」
要はこの子にカギも渡してるわけで、さらにそのことを当事者のおれには何も教えていないのだ。はっきり言って狂気の沙汰だ。
「お母さんのことをババアとか言ったらだめだよ。それにしてもおばさんは、ちゃんと同棲のことを隆司君に伝えておくって言ってたけど。なんで言わなかったんだろうね」
「ほんとだよ、まったく、女子高生と男子高生が同棲だなんて、どう考えてもやばいだろ……って?うん、なんだ、今なんて言った?」
さらっと流しそうになるところだったが、なにか聞きなれない単語を言わなかっただろうか。
思わず箸でつかんだ鮭を、川に放流する勢いで落としそうになった。
「えっ、なにって同棲でしょ?」
「どっせい!?」
「同棲だよ」
「あ、あのわっかのある惑星?」
「それは土星ね」
「僕はもちろんまだそうだけど」
「うーんそれは、童貞って何を言わせるのよ。同棲よ、同棲、分かってるでしょ」
おいおいおい、ま、まさか、ほんとうに同棲するのか。こんな美少女と……。いいのか、僕の人生にこんなチャンスが来てしまって。嘘じゃないよね、ドッキリとかひかえてないよね。
「な、なんで同棲する必要があるんだよ。家事をしに来るだけでいいだろ」
そりゃあうれしいけど、突然女子高生と同棲始めたなんてなったら、パニックで何もできなくなるぞ。
「だって、それじゃ隆司君が朝絶対起きないし、下手すりゃ学校にも行かないっておばさんが言うんだもん。じゃあまぁとりあえず一緒にすんじゃえばいいかって」
あっけらかんとして、そんなことを言う橘真美である。
「いやいやいや、君の両親はそれでいいのか。仮にも若い男女が二人なんだぞ」
俺が父親なら断固として許さんぞそんなことは。
「別にいいってさ、隆司君のことはよく知ってるからって言ってたよ」
どういうことやねん、俺は橘って人全く知らないのだけれども……。
「まぁそういうことだから、これから1週間よろしくね。―――ところでさ……」
急に声のトーンを変えた橘真美は、少しにやけながら何か言おうとしてる。
「ところで、なんだよ……」
「私の朝ごはん美味しい?」
普通の質問であるのに、なぜか僕はぞくっとさせられてしまう。
「あ、あぁ、普通においしいよ。ありがとうね」
普通においしいという言葉は、いかにも現代語って感じで好きではないが、普通においしかった。
「ふーん、普通においしいんだ?何か変だと思わなかった」
ふと橘真美の表情を見る、何やらひどく蔑んだような目でこちらを見ている。
「へ、へんって別に何か変とは思わなかったけど、な、なんか変なのか?」
すると、橘は急にグイっとこちらに顔を近づけて、じっと僕の目を見ながら話しだす。
「変だと思わないの?そもそも年頃の女子高生が、しらない男の部屋を訪れて、起こしてあげて、朝食を作るなんて言うこのシチュエーションが!」
急に語気を強めながら、
「ねぇ、変だとは思わないの?」
そしてもう一度同じ質問をぶつけて、すっと顔を離していく。
その声に僕は思わずふるえてしまっていた……、な、なぜだろう、こ、こわい。
「そ、そりゃあ、確かに変だとは思ってるけどさ……。」
当たり前だ、変だなんてことはとっくに思っている。正直夢の続きなんじゃないかとも思ってる。
そして、続く橘の言葉はさらに意外なものだった。
「はり……。」
はり?
「針は入ってるから……」
なんだ、今なんて言ったんだ。
「あなたが今食べてるその朝食に針を入れてみたの、私」
にやけながらも、なぜか無機質に見える表情で、小さな声で囁く橘。
イ、いったい何を
「いったい、急に君は何を言うんだ……?」
「あははははは、ねえ針を入れてみたのよ私。ねぇ気づかなかったの?もしかしたら気づかないまま呑み込んでしまったのかしら?あははははは、無様ねあなた」
高笑いを始める橘真美……。
こ、怖い、怖すぎるいったい何を言ってるんだこの女は!?
そんはずはない、いくら何でも針が入ってるなら気づくはずだ。そうだ冗談だ冗談を言ってるに決まってる。
で、でも冗談なのか、この女の子の雰囲気はとても冗談をを言ってるようには思えない。
僕は、おもわずガタっと椅子から立ち上がってしまう。
「き、き、きみはなにを……」
恐怖におののきながら口を開いた僕に
「何を真に受けてるのよ、冗談に決まってるじゃない……。」
橘真美はそういった。
冗談、なのか?
とんでもない1週間が始まりそうであった。
※という感じで、続きはゆきんこさんオリジナルの方でお楽しみください。オリジナルを見て俺が想像したシチュエーションはこんな感じです。なんかもっと主人公は葛藤していいような気がしますが、出会うだけで3000字になってしまってるのですなぁ。
オリジナルの続きもみて、ゆきんこさんが書きたい内容もなんとなくつかめたような気がするのですが、まぁ最後まで書くのは違うと思いますのでここまでとします。
って、ラブコメ書くの楽しいなぁ。一本短編を書いてみてもいいかもしれない。
僕も恋テロに作品乗せられるかしら。
ゆきんこさんのオリジナル↓
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885460276/episodes/1177354054885460277
ゆきんこさんの「僕たちの恋物語」を書き直してみる ハイロック @hirock47
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