僕たちの恋物語
ゆきんこ
一日目 同棲生活は突然に
僕は目覚めた。時計を
いつもは七時に目覚まし時計をセットしていたので、一時間早く起きた事になる。
「なんか、嫌な予感がする・・・・・・」
そんな気がしただけなのだが、怖くなって二度寝はやめることにした。
そしてベッドから足を下ろし、立ち上がった。
扉の前に立ち、大きな深呼吸をして扉を開けた。
キッチンの方へと目を向けると、エプロン姿の女子高生らしき人が居た。
「お前は誰だ。住居不法侵入で警察に通報するよ」
威圧感は全く感じられなかったと思うが、これでも目一杯の脅迫だ。
「えっ? 聞いてないの?」
そういえばそうだ。昨日の夜に親が三日間出張でハワイに滞在すると言ってたのを思い出した。
そしてその三日間の間、隣のマンションで一人暮らしをいている人に来てもらうように頼んどいていたらしいのだ。
「えーと。隣のマンションの人だよね?」
「そうそう。名前は
「僕は
「そういえば、今日の朝食のメニューの一つに針が入っているから探してみてね」
衝撃の一言だった。冗談だと信じたい限りだが怖い冗談だと思った。
正直言って・・・・・・笑えない。
「それって、冗談だよね?」
「冗談なわけないじゃない」
その瞬間、
僕は椅子に座り、朝食が出来るのを待っていた。
普通ならば心待ちにするはずの時間がありえないほどに
「出来たよ。ええと……小浮気。針も入れたし、完璧だよ」
「針さえ入ってなければありがとう」
「あっははははは!!」
怖い。怖過ぎる。これを狂人というのだろうか。
取り敢えずここから逃げようと思う。
「橘、どうしたんだよ。橘。僕は逃げるから鍵は閉めといてね」
「あははははは!! もうだめ。死んじゃう。ホントにもうだめ。さっきのは嘘なのに、まさか本当に信じるとは思わなかったよ。あははははは!!」
「えっ? あっそうか。あはは……」
そして、軽く談笑を交わして、何事もなく朝食を食べ終わった。
僕は制服に着替えて川北高校へと向かう。
靴を履いて扉を開けようとしたときに不意に後ろから声を掛けられた。
「いってらっしゃい」
僕は便宜上こう言った。
「言ってきます」 そして僕は扉を開けた。
僕は歩きながら、橘と過ごす一週間について考えていた。
この状況だったら、男女の関係に発展しても可笑しくはない。
というか、むしろそれが自然な流れだ。
でも橘にはそんな感情を抱かないような気がしていた。
そんなことを考えていると、気づいたら学校の下駄箱で靴を履き替えるところだった。でも僕以外は誰も来てはいない様子だった。
「ちょっと、早過ぎたかな」
そんなことを思いつつも教室に入り一人寂しく席に着いた。
いや、一人寂しいのは友達が居ないのでいつものことなのだが、今日はそういう感覚的なことではなく、物理的に一人だった。
そして、ふと時計を一瞥すると七時三十分であった。
「やっぱり早かったか」
そんな小言をぼやいていると、廊下の方から足音が聞こえてくる。
足音はこちらへと近づいてきた。
そして扉の前で足音がなくなり、扉が開いた。
その扉を開けた音は、
そして扉を開けた人物の風貌が露わになる。
その風貌を一言で表すのは難しかった。
例えを使ってもいいならば『ハナイカリ』のような人だった。
僕はそう考えた。いや、少し違う。なぜなら今は真夏だ。つまりその花は今が美しいのである。ということは、かわいいの一言で今は表せるだろう。
そんなことを考えていると視線を感じたので、その視線を感じた方向を見る。
その視線はさっき入ってきた女の子からの視線であった。
どうやら思想に
その女の子は茫然と立ち尽くしている様子だったので僕は声を掛けた。
「どっ……どうしたの?」
その女の子は開けていた口を閉じる。
そして表情を一変させ口角を上げて、軽く微笑んだ。
「えっとね。なんでもない」
「えっ……あっうん」
それから会話もないまま事は進み、帰りのホームルームも終わりに差し掛かったところだった。
「あのさ、今日は一緒に帰ろ」
そういってきたのは、朝の女の子だった。
「え?あっうん」
斯くして、二人で帰ることになったのだが、二分か三分は沈黙の時間が続いていた。
「あのさ、今日はなんで、僕と帰っているの?」
「ちょっと、話したいことがあるから……」
僕は内心、告白されるシチュエーションだと思って気分が高揚していた。
「えっ?あっうん……」
「君って今、橘と同棲しているでしょ?」
僕は驚愕した。誰にも言ってないし誰にも見られていないはずなのに、この女の子は知っていたからだ。
「そうだけど、なんで知っているの?」
「橘が学校で言い回っていたから、学校中の人が多分知ってる」
「具体的にはなんて?」
「えっと、それはね……」
僕はそれを聞いて殺意が湧いた。
「学校中に、『自宅警備員と一週間同棲するよ!』って言いまわっていたのは本当か!!」
殺意が湧いたが、自宅警備員=小浮気隆司になっていたことには
目から水が湧きそうになった。
「あれあれ?毎日ズル休みして、自宅警備しているのは誰かなぁ?」
バカにするような口調で橘は言ってきた。
「ぐはっ!心に刺さるからやめろ!!」
「毎日タダ働き、お疲れ様です!」
「ぐふっ!!」
橘と生活すると煽り耐性が付きそうだと思った。
「ガチャ」
鍵を開ける音がして、後ろを振り返ると小学四年生ぐらいの幼女が立っていた。
そう、僕の妹だ。
「小学生の彼女が居たんだね!」
「違う!!」
妹が靴を脱ぎ、こちらに向かって歩いてくる。
「なに言ってんだよお兄ちゃん!私たち付き合ってるでしょ!!」
「恥ずかしがらなくていいんだよ~」
「違うわ!!」
そんな会話をした後、他愛もない会話をしたりして何事もなく一日を終えた。
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